論理の経営に限界、エリートが「美意識」を鍛えるワケ人生の景色が変わる本(5) 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

山口周著 光文社新書
山口周著 光文社新書

世界の常識が変わりつつあることを思い知る本。著者は「論理的に説明できること」を大前提とする従来の経営判断の在り方が、限界に直面していると見る。論理と理性で導き出したアイデアでは、もはや差別化できない、リーダーは自分の中に培った美意識に発する直感を大切にすべきだ、と説く。

物事の「真・善・美」を理屈ではなく、直感的に判断できるリーダーが求められる理由には説得力がある。それだけに少々怖いのは、誰もが分かる理屈を超えたところ(場合によっては「訳の分からなさ」)に価値を見いだす風潮が過度に高まること。口先だけで実力に乏しい人物を、弾みで「カリスマ」に祭り上げるようなことは起きないか? 著者が「アートと論理のバランス」の重要性を強調し、エリートではない人にも美意識の鍛錬を勧めるのは、そうした事態を防ぐためにほかならない。

要点1 「論理的正解」が価値を失った

世界のエリートが美意識(直感的、感性的スキル)に磨きをかけている。MBA出願者が減るなか、多くのグローバル企業が幹部候補を美術系エグゼクティブトレーニングに送り込んでいるのは象徴的だ。背景には、サイエンス(論理的思考)偏重の意思決定スタイルではビジネスの舵(かじ)取りが難しくなっていることがある。これからの時代、白黒のつかない問題に論理偏重のアプローチは通用しない。

「正解のコモディティ化(陳腐化)」が起きていることも重要だ。多くの人が情報と知識を論理的に分析するスキルを身に付けた今、論理的な正解には誰もが到達できる。いきおい、戦略に大きな違いがないなかで差別化を図るには、スピードを上げるかコストを下げるかしかない。企業を疲弊から救うのは、サイエンスに縛られない発想による新しいビジョンだ。

要点2 自己実現市場が求めるクリエイター的発想

消費者のニーズは、市場の成熟とともに変化する。初めは機能性こそが最大の選択基準となるが、そこに目立った違いがなくなると、デザインやブランドなど感性に訴える要素に、次いで「それが自己実現に役立つか」に着目するようになる。モノであれサービスであれ、最後はファッション的側面での競争にならざるを得ない。

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