ソニー創業者の盛田昭夫氏が亡くなって今年の10月で20年になります。傑出した経営者であった盛田氏を語るとき「国際人」が枕詞(まくらことば)のように使われます。事実、その通りでもあったのでしょう。
■幼少期から育まれた西洋の文化・センスへの理解
叔父に敬三さんという方がいらして長くパリに住んでいました。盛田氏の幼少時に現地から珍しい品々を送ってきたそうです。また、母親の収子さんはハイカラで西洋のクラシック音楽を聴くのがお好きだったとのこと。こうした舶来の文物に親しむ時間の蓄積が、知らず知らずのうちに西洋の文化、西洋のセンスへの理解を育んでいったのでしょう。盛田氏の「国際人」は少なくとも一朝一夕で身についたものではないのです。
盛田氏は臨機応変の人でもありました。その片りんが、数々のスピーチに表れています。盛田氏は、お祝いのスピーチでもなんでも、原稿を棒読みするのを嫌いました。その場の雰囲気を読みながら、当意即妙に、ユーモアを交えながら、生き生きとした言葉でスピーチするのを好んだのです。
こうした臨機応変を可能にするのは、頭の回転の速さだけとは限りません。体験の積み重ねや、研究の蓄積によって、何らかの知見を十二分に身につけた、つまり「マスター」した人だからこそ、当意即妙の対応が自然とほとばしり出るのです。それは日々のファッションにもあてはまります。盛田氏の身についた西洋のファッションへの理解とセンスが、ひょんなことから明るみになることがありました。

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