お手ごろスパークリング、カバ 夏に飲みたい8本
エンジョイ・ワイン(12)
スペインのスパークリングワイン「CAVA(カバ)」が人気だ。フランスのシャンパンと同じ瓶内二次発酵方式で造られるため、香りや味わいがしっかりとしている一方、1本1000円前後から買えるお得感が理由だ。種類もどんどん増えている。一段と暑くなるこれからの季節にぴったりのカバを紹介しよう。
上質のスパークリングワインは普通のワインと同じようにして造ったワイン(ベースワイン)に、酵母と酵母の栄養となる糖分などを加え、二次発酵させて造るのが一般的。二次発酵の時に発生する炭酸ガスがスパークリングワインの泡の正体だ。
二次発酵を大きなタンクの中で行い、ワインと炭酸ガスを一緒に瓶詰めする製造方法がタンク内発酵方式。フルーティーで軽やかなスパークリングワインに仕上がる。比較的低コストでできるため、価格も安いものが多い。
これに対し、二次発酵をボトルの中で行うのが瓶内二次発酵方式だ。発酵終了後も酵母などの成分をワインと長時間、接触させることで、独特の芳しい香りを生成。味わいも複雑になる。また、炭酸ガスが時間をかけてワインに溶け込むため、泡がきめ細かく、持続するのも特徴。この方式で造られるスパークリングワインはシャンパン、カバ、そしてイタリアのフランチャコルタが有名だ。
カバの一番の魅力は、瓶内二次発酵方式に由来する、しっかりとして複雑な香りや味わいを、シャンパンの何分の一の価格で楽しめる点。味わいの複雑さや深みではシャンパンには及ばないが、デイリーワイン並みの値段でちょっとだけぜいたくな雰囲気を味わえるのが愛好家に受けている。また、味わいがしっかりしているため、食前酒としてだけでなく、シャンパンのように料理と合わせてもおいしい。
こうした特長を持つカバは日本でも年々人気が上昇。2017年の日本への輸出量は約912万本で、ドイツ、ベルギー、英国、米国、フランスに次ぐ世界6位。伸びも16年比で7.25%増と顕著だ。単に量が伸びているだけでなく、生産者や味わいのタイプも多様化している。
それだけに、どのカバを選んでよいか迷う人も多いだろう。数が多いため品質の差も大きい。そこで今回、ワインバー「ロスビノス」(東京・品川)のオーナーソムリエでカバに詳しい櫻井一都さんの協力を得て、ネットやワインショップで1000~2000円台で買えるお薦めのカバを選んでみた(順不同。価格はオープン価格を除き、税抜き希望または参考小売価格)。
〇「マッサナ ノヤ ブルット ロサード」 2600円
カバは地場品種のマカベオ、チャレロ、パレリャーダをブレンドして造るのが基本だが、現在はシャンパンの主要品種であるピノ・ノワールやシャルドネなどの使用も認められている。ピノ・ノワール100%で造ったこのロゼ・カバはイチゴやサクランボなど赤い果実の香りが華やかで、口に含んでも果実味があふれる非常にチャーミングな味わい。「スモークサーモンや生ハム、パテやリエットなどと合わせると最高」(櫻井さん)だ。
〇「ペレラーダ グラン・クラウストロ」 オープン価格
これもシャルドネとピノ・ノワールが主体。香りは芳醇(ほうじゅん)で優雅。味わいも複雑で、インパクトの強いカバだ。「熟したリンゴの蜜やアンズ、パイナップルなどのフルーツ香がはっきりと感じられ、余韻にリンゴあめのようなフレーバーと、心地良いほろ苦さ、ボリューム感が続く。オリジナル性あふれる唯一無二のカバ」(櫻井さん)。生産者のカスティロ・ペレラーダは、画家のサルバドール・ダリお気に入りのワイナリーとしても有名だ。
〇「フレシネ アイス キュベ エスペシアル」 オープン価格
まばゆい真夏の太陽を連想させる真っ白なボトルが目を引く。やや甘口で、リンゴや洋ナシ、かんきつ系の香りが特徴。名前の通り氷を浮かべて飲むのがお薦め。「オンザロックにしてハーブを添えれば、エスニック料理にもぴったり」(櫻井さん)。
〇「カステルブラン ドス・ルストロス白」 2500円
カバの老舗生産者カステルブランの最上級キュベ(銘柄)で、日本では6月3日発売。二次発酵期間を含む瓶内での熟成期間が最長36カ月と非常に長く、「熟れた洋梨やアンズ、そして、スパイスとヨード的なニュアンスが混ざり合い、スモーキーで一段と複雑なアロマを感じる」(櫻井さん)。辛口で酸味の余韻が長く、食事と一緒に味わいたい一本だ。
〇「カステル・サント・アントーニ ジャズ・ナトゥーレ レセルバ」 2600円
ピアノの鍵盤をかたどったラベルが、思わず手に取りたくなる一本。熟成期間の長い高級カバの生産に特化したカステル・サント・アントーニが地元バルセロナ出身の世界的ジャズバンドとのコラボレーションで2017年から生産を始めた。「ゴールデンデリシャスや洋梨、白桃などの華やかな香りと、ミネラルや白胡椒(こしょう)、コリアンダーなどスパイス調の香りが特徴で、口の中で心地良いほろ苦さとリンゴの蜜のようなフレーバーが広がる」(櫻井さん)。
〇「ロジャーグラート カバ コーラル ロゼ ブリュット」 2100円
ピンク珊瑚(コーラル)をイメージさせる淡いサーモンピンクの外観で、「フレッシュなラズベリーやあんずの香りに加え、ハーブやミネラル、イーストなどの香りがほんのりと漂う」(櫻井さん)。淡い色調のスッキリとした味わいのロゼ・カバは世界的に人気が高まっている。「生ハムやマグロのカルパッチョ、ラタトゥイユなど、軽やかな前菜と合わせたい」(同)。
〇「ベソ・レセルヴァ・ブリュット・ナチュレ」 1450円
カバはカタルーニャ州が全生産量の95%を占めるが、これは珍しいバレンシア州のカバ。「バレンシア産らしい青リンゴや白桃、ハーブなどの軽やかな香りに加え、15カ月以上の瓶内熟成からくる複雑な香りも感じる」(櫻井さん)。バレンシアは欧州有数のコメの産地のため、「肉や魚介のパエリアなどお米料理との相性が抜群」(同)という。
〇「セグラヴューダス ブルート オーガニック」 2000円
「さわやかなかんきつ系の香りが第一印象。その後から、青リンゴや、フェンネルなどのハーブ、蜜、スパイスの香りが追いかけてくる。味わいはクリーミーだがドライ。シャープな酸が心地よい」(櫻井さん)。「ハーブを効かせたシンプルな魚介のマリネやワイン蒸しなどと合わせるのがお薦め」(同)だ。
(ライター 猪瀬聖)
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