バーモントカレーに神州一味噌 パウダーに変身の理由

日経クロストレンド

新たな使い方を啓発するため、神州一味噌はパパッと味噌パウダーを使うレシピ集を用意。製品に添付して提供するレシピ集の他、ホームページにもレシピ集がある(写真提供:神州一味噌)

実演販売で1日60個売れたスーパーも

発売当初の数ロットにはレシピ集を付けた。今後もレシピ集は作り続ける予定で、ホームページでも発信していく。募集したモニターがSNSでオリジナルレシピや感想なども発信している。

「フリーズドライ味噌は一般の方には知られていないため、何に使っていいのかイメージが湧かない方が多い。だが、味噌は日本人にはなじみが深い味なので、ご飯にかけただけでも『ふりかけ』になるほど、どんな料理にも合う万能調味料。レシピ集はそれをヒントに用途を広げてもらうためのツールだ」(堀次長)。

パパッと味噌パウダーのホームページには、味噌汁・スープ、おかず、副菜・おつまみ、ご飯・パン・麺、おやつの5カテゴリーで、現在計65のレシピが掲載されている。スーパーマーケットなどでは、パパッと味噌パウダーを使ったレシピを示して実演販売することもある。1つ500~800グラムの通常の味噌は、スーパーマーケット1店舗で月に10個程度売れるのが普通という。だがパパッと味噌パウダーを実演販売すると、1店舗で1日に60個販売することもあるという。

神州一味噌は店頭での販促も強化。スーパーマーケットでパパッと味噌パウダーを使ったレシピを実際に調理してお客に提供することで、1時間で8個売れたケースもあった(写真:丸毛透)

堀次長は、パパッと味噌パウダーの販売目標を「今年は2億円程度」と言う。現在、スーパーマーケットでは味噌の棚に並べられていることが多いが、調味料の棚にも並べられるようになれば、販売額は上方修正も可能かもしれない。

「スーパーマーケットなどとの商談で、いきなり調味料棚に置いてください、とはお願いしていない。味噌と調味料の両方の棚で陳列してもらえればうれしいが、まずは味噌棚でしっかり自己紹介していきたい」と堀次長は語る。

ハウス食品の狙いは社会課題をいかに解決するか

神州一味噌のパパッと味噌パウダーが、味噌需要回復のために開発されたのに対し、ハウス食品の味付カレーパウダー バーモントカレー味<甘口>の開発動機は異なる。子育て共働き世帯の悩みに狙いを絞り、調味料の新しい市場を開拓しようとしたからだ。人気ブランドであるバーモントカレーの名称を付けているが、同シリーズの製品ではないため、リブランディングではない。全くのオリジナルだ。それでも「バーモントカレー味」としたのには、大きな意味がある。

ハウス食品が19年2月11日に発売した「味付カレーパウダー バーモントカレー味<甘口>」は、バーモントカレーのリブランディングとは異なる独自の商品だ

ハウス食品が19年2月11日に発売した味付カレーパウダー バーモントカレー味<甘口>は、3年前に発足した新領域開発部3グループが手掛けた。担当者は全員、研究所から異動した元研究員で、必ずしもマーケティングやブランディングの専門家ではない。与えられたミッションは、今までにない製品を開発することだった。

開発に着手したのは17年初頭。製品コンセプトの根底には、社会のニーズがあったという。「当時、待機児童問題が大きな社会問題になっていた。それに対し、食品メーカーとして何か貢献できないかと思っていた」と同グループの石井英貴氏は語る。そこでまず、子育て共働き世帯の生活実態を徹底的に理解することから始めた。

たまたま石井氏の上司が保育園に通う娘2人を持つ共働き世帯だったので、最初に行ったのは、働く母親がどんな生活をしているのかを上司に体験してもらうことだった。上司が時短勤務をして、娘の保育園への送り迎え、洗濯、掃除、食事の用意などを担当した。その様子を定点カメラで録画し、どういったところに困っているか、どんなポイントでストレスを感じるかなどを観察した。また、社内や他の企業で働く24人の母親に生活上で困っている点をヒアリングし、さらに夕食の料理写真を1週間分、撮ってもらった。その結果、子育て共働き世帯の買い物と夕食の悩みの傾向が見えてきた。