構想から商品化まで4年、職人の欲求を満たしすぎた包丁

プロ用としても、家庭用としても人気が高い三星刃物(岐阜県関市)の包丁。渡辺隆久社長の奥さま友佳理さんが主宰するパン教室の生徒との会話をきっかけに誕生したのが「和 NAGOMI」包丁です。プロが使える品質で、家庭で手軽にメンテナンスができて長く切れ続ける包丁を目指したのだとか。これはクオリティーが高く、私が知る限りではコスパが良すぎるほどです。
素材は、硬度が高くさびに強くて粘りのあるステンレス、モリブデン鋼440A。そして、最高級包丁に用いられる4段階の研ぎ加工がされています。なのに、価格は1万円(税別)とコスパ良し。
この包丁のすごいところは、「家庭でも手軽にメンテナンスができる」ことを実現するためにこだわりすぎた結果、開発を始めてから商品化されるまでに4年もかかっていることです。
まず刃の部分。独自の焼き入れ方法で鍛えて、刃をかなり鋭角に仕上げています。これによって、月に1~2回、新聞紙で研ぐだけでかなり切れ味が持ちます。新聞紙に対して包丁の背の部分を約15度浮かせて、こする音が聞こえるほどに強く押さえて10回程度ずつ両面をこするだけ。私も実際に新聞紙で研いで納得しました。切れ味が戻るんです。

それでも切れ味が鈍ってきたら、今度は耐水サンドペーパー400番でこすればOK。最終的に切れなくなったら、三星刃物に送る。包丁には、研ぎ直し券(1回分、2回目以降は税別1600円)が付いています。これもプロ品質で手軽に使えるためのサービスです。
もう一つのこだわりは、柄の部分。柄には、刀身を支えるために打ったリベットがありますが、柄を丁寧すぎるほど磨き上げているので、リベットが消えています。結果、柄にはまったく凹凸がなくてなめらか、手にしっくりとなじみます。また、持ちやすいように丸みを帯びた形状にしているので木目が美しいんです。この磨き技術の試行錯誤で約4年の月日をかけてしまったのだとか。妥協せずに商品化したところに脱帽です。
和 NAGOMIシリーズは、持った瞬間から職人の手作業の細やかさが分かるもの。これから料理を始める人にもおすすめします。(談)
(ライター 広瀬敬代)