旅行・レジャー

ナショジオニュース

10億ボルト超に達する雷雲の電圧 新手法で解明

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/5/25

次に、GRAPES-3の過去3年間のデータを使って、研究チームは184の雷雲を分析した。すると、ミュー粒子の数値から、2014年12月1日に発生した雷雲の電圧は瞬間的に13億ボルトに達していたことがはじめて明らかになった。

■次は落雷のエネルギー

ミュー粒子を使ったこの測定法なら、雲の広い範囲を測定できるので、飛行機や風船による実験よりも正確だ。ということは、以前のデータは実際よりも数値が低く、その多くは数十億ボルトのエネルギーを含んでいた可能性がある。さらに、大気物理学者を長いこと悩ませていた謎も、これで解けるかもしれない。

1994年、遠い銀河で発生する強力なガンマ線バーストの観測用に作られたNASAのコンプトンガンマ線観測衛星が、地球の大気から放射される高エネルギーを検出した。宇宙でも最大級のエネルギーを発する現象に似たことがなぜ地球で起こっていたのかについて、誰も説明をつけられなかった。

雷が関係しているとは考えられていたが、過去の実験で観測された雷雲のエネルギーは、ガンマ線バーストに匹敵するほどの強さはでなかった。

それが今、GRAPES-3による10億ボルト級の測定結果により、地球上の雷雲にもこの謎の現象を起こせる可能性があることが初めて示唆された。グプタ氏は、この関連性をさらに裏付けるためにガンマ線検出器を導入したいと考えている。また、落雷によって雷雲のなかの電圧がどれくらい早く消散するのかも調べたいという。

「放電についても調べたいです。これが最も大きな災害を引き起こしますから」

だが今回の研究結果だけでも、既に他の研究者から高い評価を受けている。

「これまで誰も考えつかなかった方法です」。米ルイジアナ州立大学バトンルージュ校で高エネルギー宇宙線とガンマ線を研究するマイケル・チェリー氏は言う。同氏は、この研究には参加していない。

まるで核爆発のような巨大な雲は、6月の夕暮れ、中国北京の上空に現れた雷雲(PHOTOGRAPH BY LI XIN, NATIONAL GEOGRAPHIC YOUR SHOT)

超強力な宇宙線が比較的ありふれた雷などの影響を受けるといわれても、以前ならほとんどの研究者が懐疑の目を向けていただろうと、チェリー氏は付け加えた。しかし雷が、地球上の物理学者の手が届く最も強力な天然の粒子加速器のひとつであることを、この研究結果は示唆している。

「こうした高エネルギーを研究できる対象は、はるか遠方にあるブラックホールや超新星に限りません。空を見上げればすぐそこにある雷でも研究できるのです」

(文 Adam Mann、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年5月6日付]

旅行・レジャー 新着記事

ALL CHANNEL