2017年、日本版「ガストロノミーマニフェスト」を発表し、政府へ日本の食のあり方を提言した

――御校では2017年7月に、日本版「ガストロノミーマニフェスト」(別項参照)を策定されました。この経緯と目的、内容などをお教えください。

16年12月に採択された内閣府の「クールジャパン拠点連携実証調査」の一環として策定しました。食関連企業や地域、教育機関と連携し、食文化産業の発展に寄与するとともに、日本の食の未来ビジョンを示すものにしたいと。現在の食関連行政は縦割りが著しく、食関連産業のさらなる発展には、大きな阻害要因になると考えます。

農林水産業や外食産業の育成・振興は農林水産省、食品産業・食品加工業の管轄は経済産業省、食品衛生は厚生労働省、学校給食や食育、食文化に関しては文部科学省などと、各省庁が自分たちの縄張りの中でしか仕事をしない。農林水産物の収穫、生産から加工、流通、販売、消費、さらには食文化までを一気通貫で見ていく、考えていく場がないのです。そこで、色々な分野の先生方にもご協力いただき、うちが提言という形でまとめました。

日本版「ガストロノミーマニフェスト」

今ではなく、将来の「食」を考えていくことは絶対に必要です。クールジャパンで日本食、和食を海外に売っていくのではなく、国内の食関連産業全体の足元を見つめ直すべきだと思います。食関連産業自身も、すし、ラーメン、てんぷらを売ることよりも、日本の国土、水など環境にも考慮しながら、どう連携を進めていくのかを考えなければいけませんね。

――次回は、人工知能(AI)時代における食の在り方などについてお聞きします。

辻芳樹(つじ・よしき)
1964年大阪府生まれ。93年 学校法人辻料理学館理事長、辻調理師専門学校校長に就任。2000年 主要国首脳会議(九州・沖縄サミット)にて首脳晩さん会料理監修。04年 内閣の知的財産戦略本部コンテンツ専門調査委員に就任。10年米国で開催された国際料理会議「Worlds of Flavor International Conference & Festival(WOF)」で組織委員を務め、「日本料理における多様性~伝統と革新~」について基調講演を行う。18年フランス国家功労勲章「シュヴァリエ」を受章。主な著書に「美食のテクノロジー」(文芸春秋社)、「和食の知られざる世界」(新潮社)など

(ジャーナリスト 加藤秀雄)

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