料理人を育てるとき、外せないのはこだわり、謙虚さ、探求心、経営、食材学、社会学で、料理技術より大切

――皆さん、フランス校を卒業して、現地に居ついてしまうのですか。

8割はそうですね。ただ、卒業してもビザの関係で、一度帰国しなくてはなりません。それで日本で働いて、改めてワーキングホリデーなどで現地へ渡り、向こうのオーナーに「残ってほしい」と言われてビザを取得したり、ノービザで行って、向こうの弁護士に頼んでビザを取得するなど、地方ごとに違いはあります。

――料理人を育てていく中で「ここだけは外せない」とお考えの点は何でしょう。

まずはこだわり、謙虚さ、探求心、経営、食材学、社会学といったところでしょうか。料理の技術というのは3割くらいなのです。この3割を学ぶだけでも大変なことなのですが、社会に出たら、それ以外の7割をきちんと習得することが大切なのだということを教える、気づかせることが大事だと思っています。1年間ですべてを教えることは難しいので、これらのカリキュラムを組み込んだ2年、3年のコースを作っていこうと考えています。

――御校の創業者で父上の、故辻静雄さんは「生徒たちにはお金の大切さを教えた」とおっしゃっています。食材原価率は3割以下にするなど、飲食店経営理論を伝えようとしたのだと思いますが、「知ったかぶりをする客には、残り物を『あなたのためにとっておいた』と言って煙にまき、食べさせてしまうことが大事なのだ」とまでおっしゃったとか。これは現在の教育の中でも変わっていないのでしょうか。

食材ロスを減らすことで原価率を抑える。これが飲食店経営の要諦だと言っているのですが、辻静雄の言葉というのは、そのまま真に受けると危ないところがありますね(笑)。その時代、時代に合わせて翻訳していくことが必要ですね。ただ、言っていることには間違いがないし、今の学生には言葉を変えて伝えていかなければいけないと思います。