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「化学調味料」の誤解解きたい 味の素社長世界を巡る味の素社長 西井孝明氏(下)

「昨年米ニューヨークで開催した『ワールドうま味フォーラム』では、MSGへの誤解の確認と正しい理解について議論しました」と西井社長

それから、インドでは乳児に一定期間食べさせてはいけない食品リストの中にMSGが入っています。ご承知のように、母乳の中に最も含まれているアミノ酸というのはグルタミン酸である一方、メーカーが作った粉ミルクというのは、ほんの一部のプレミアム品を除いてはグルタミン酸は含まれていません。粉ミルクにグルタミン酸が含まれていないことが過食に通じており、ジャイアントベビーの問題につながっていると指摘する科学者もいます。

つまり、こういう問題はMSGに対する否定ということが原点にあって、これが発祥の地の米国から海を渡ってそれぞれの国に展開する中で誤解が重なり、受け手側のリテラシーのなさに加えて、科学をベースにした適切なコミュニケーションを行うことができませんでした。このように、MSGはそれぞれ違った課題を各国に与えている状態です。米国以外のこうした問題も含めて我々は取り組んむべきという意味も、フォーラムに込めました。

フォーラムでは、何人もの専門家が登壇した中で、日本人はうま味インフォメーションセンター理事、当社の二宮くみ子上席理事だけで、ほかは全員米国人でした。もともと米国でチャイニーズレストランシンドロームが起こり、そのMSGの安全論争が米国を中心に展開し、そして安全性を科学的アプローチで証明したのも米国です。今、残されているのは、「NO MSG」という典型的な食の風評被害の残存物であり、この先正しい理解を促進するのは、我々の仕事だと思います。

ユニークだったフォーラムでの発表を一つ紹介しましょう。今は当社社員でもある米コロンビア大学の客員教授がYoutubeに流したビデオメッセージについてです。「卵を食べ過ぎるとコレステロール過多になって身体によくないから1日1個までにしましょう」というのが20年くらい前にありましたよね。後で科学的根拠がないことが明らかになったために今はまったく言われなくなったんですけど、彼女はそれをリスクコミュニケーション(リスク評価、リスク管理とともにリスク分析手法を構成する3要素の1つ。評価、管理の結果を、ステークホルダーの間で理解し合うこと)を徹底して行い、風評を一定以下に収めたキーパーソンなんです。

彼女が制作したビデオメッセージは、あるピザ屋さんの店頭のシーンから始まります。メニューには、「with MSG」と「NO MSG」と2つから選べるようになっていて、「どちらがいいですか」とお客さんに聞くんですね。ある人は「with MSG」のピザを食べていて、見ると普通のピザです。そこで「NO MSG」のスペシャルピザを頼むんです。すると、出てきたのが、ドゥー(小麦粉の生地でできたピザの台)だけで、チーズもトマトも何の具も載っていないピザなんですよ。店主は「これはあなたが求めているピザですよ」と。MSGは、コンブやカツオ節だけでなく、チーズやトマトなど、多くの食材に含まれています。つまり、MSGというものがほとんどの食材に普通に含まれていて、すでに皆さんが食べているものなんで、そんなに毛嫌いするようなものじゃないんですよと、ユーモラスに真意を伝えているのです。

――日本では、「NO MSG」と同じような「無添加」という問題があります。

日本の「無添加」問題は、「食品添加物を添加していない(使用していない)」という意味の言葉ですね。主に、人工保存料、人工甘味料、人工着色料などの食品添加物を使用していないという意味で使われているようです。「無添加」には、「無化調(化学調味料を添加してない(使っていない)」も含んでいることもあるようですが、「無添加」と「無化調」はあえて分けて考えたいのです。

化学調味料は、当社の製品の味の素であるうま味調味料を指しているのですが、1960年代にNHKが、「味の素」という商品名を放送できないということもあって、MSGが革新的であり、先進的であるという良い意味を込めて、こう呼んだのが始まりです。米国の「with MSG」と同じように良い意味で、グルタミン酸が神経伝達物質でもあることから、「頭が良くなる」とも言われたものでした。ところが、環境汚染などの公害問題が大きくなったころ、「化学」が人工的で、健康にも悪いものとネガティブにとらえられるようになってしまったのです。

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