■イタリア流ジャッカジャケットとは
「もともとイタリアではベスパやオープンカーに乗る人が、腕周りが動かしやすく暖かいアウターとして支持してきました。これにクラッチバッグやブリーフケースを持って会社に向かうのがビジネススタイルなんです」
――機能性とファッション性を兼ね備えた、イタリアならではの着こなしですね。
「毎年イタリアに行きますが、イタリア人のスーツの楽しみ方をもっと提案したいですね。コンビネーションアイテムをどう引き入れるか、これが、とてもうまいのです。たとえばローゲージのニットジャケット。こちらはライトグレーで非常に軽いものです。ブルネロクチネリの2019春夏は1920年代のグレート・ギャッツビーの世界を表現しています。エレガンスにスポーツやカジュアルの要素が加わったもので、色合わせもあまり強弱をつけない、自然でやわらかな色調です」
――今、スーツ市場は低調で、カジュアル化が進むにつれて一段と先細る恐れがあります。
「既製のスーツが落ち込む一方で、自分の体形や嗜好に合うスーツを求める傾向が強まっています。うちでも18年からメード・トゥ・メジャー(MTM)という、これまでにないセミオーダーの対応を始めました」
■オーダーの生地は100種類以上
――ではMTMスペシャリストの今井利一さんにお聞きします。こちらでのオーダーはどのように進んでいきますか。
今井「既製服ではフィット感に限界がありますが、MTMでは体形にぴったりの仕立てが可能になります。100種以上の生地からスーツ、ジャケット、パンツ、ベスト、タキシードなどのオーダーを受注しています。既製服をベースにしていますし、体形はプロが判断するので採寸は15分から30分程度です」
「デザイン選びやコーディネート提案など多くの時間を費やします。価格は既製服の3割増程度で、既製服ではダブルしかないジャケットをシングルに替えたり、といったことができます」
引野「これだけファッションが多様化している日本ですが、エグゼクティブ層であっても、スーツに関しては非常にコンサバだと感じています。ネクタイを締めて、スーツの上にはコート、といった型にはまった着こなしばかりです。でも、これからの時代、スーツはますます軽くなっていきますし、スポーティーな要素ももっと入り込んでくるでしょう」
「エグゼクティブの方が、そうした変化をうまく取り入れて、スーツを着ても若く見えるスタイルを体現してほしい。そうして若い世代に影響を与えていただきたいですね」
(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)
SUITS OF THE YEAR 2021
アフターコロナを見据え、チャレンジ精神に富んだ7人を表彰。情熱と創意工夫、明るく前向きに物事に取り組む姿勢が、スーツスタイルを一層引き立てる。