あのヒットCMも 中島信也氏が振り返る、平成の広告

日経エンタテインメント!

昭和57年(1982年)にCM制作大手の東北新社に入社。デジタル技術をいち早く採り入れ、93年には日清食品カップヌードル「hungry?」でカンヌ国際広告祭グランプリを受賞したCMディレクター・中島信也氏。以降もサントリー「燃焼系アミノ式」「伊右衛門」などをヒットさせた巨星にとって、平成のCMとは。

1959年福岡県生まれ。大阪育ちの江戸っ子。武蔵野美術大学卒業後、82年に東北新社入社。83年、CMディレクターデビュー。近作にオダギリジョー出演のリクルート「Airペイ」、神木隆之介出演の「BINGO 5」、松本人志出演の「FOLIO」など(写真:加藤康)

「瓶の中からシュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)が飛び出してくる『アリナミンV』のCMを作ったのが、平成2年。あのCG映像にみなさん驚かれたんじゃないかと思いますけども、そういうデジタル技術を使う新時代が始まったのが、平成でした。

僕がデジタル技術に注目したのは、自分に持ち芸がなかったからです。僕がデビューした80年代は、川崎徹さん(代表作・キンチョール)のように、原作、脚本、監督を全部CMディレクターがやる時代。僕も見よう見まねで仕事を始めたんですけど、同じようにやってもかなわない。そんな時に、会社がCGとポストプロダクション(仕上げ作業)を一緒にできる編集スタジオを立ち上げたので、『この技術をモノにすると、先輩たちに追いつけるかも』と、わらをもすがる思いで研究したんです。

そういう僕にいち早く目を付けてくれたのが、電通にいた佐藤雅彦さん(代表作・湖池屋スコーン)でした。『信也さんはすごい映像技術を持っている。僕が考えたものを形にしてくれ』と失礼なことを言われましてね(笑)。でも彼は突拍子もないことを考えつくわけですよ。そうして一緒に作り上げたのが、クリストファー・ロイドを起用したフジテレビのキャンペーン。これがいろんな賞を取りまして、『デジタルの中島』というイメージが浸透していくんです。そして佐藤雅彦さんの登場で、ディレクターより、CMプランナーが脚光を浴びるようになっていきました」