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1日60人 国籍無いまま生まれるロヒンギャ難民の子

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/4/17

トゥルジョイ・チョードリ氏のプロジェクト「Born Refugee」(生まれながらの難民)は、コックス・バザールの難民キャンプで生まれたばかりの子どもを撮影したものだ。ここでは、生後約1カ月のユヌスが母親に抱かれている(PHOTOGRAPH BY TURJOY CHOWDHURY)

「人々は、かけがえのない命が生まれてきているのだと認識し始めています。だから、私を赤ちゃんのもとに連れて行ってくれるのです」とチョードリ氏は話す。そうして20人近くの写真を撮影した。そのほとんどはまだ名前がなく、尋ねたその場で名前がつけられたこともあった。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、コックス・バザールで暮らしている50万人の子どものうち、3万人が1歳に満たない。ユニセフ(国連児童基金)の広報を務めるカレン・レイディ氏は、「国籍がないため、ロヒンギャの子どもたちの未来には暗い影がさしています」と言う。彼らは、正式な教育からも、労働市場からも切り離される可能性が高い。「国籍のない子どもは、一生差別される可能性もあります」

ロヒンギャ難民のファテマが生後1日のアスマ・ビビを抱く(PHOTOGRAPH BY TURJOY CHOWDHURY)

UNHCRは、世界中で国籍がない人が少なくとも1200万人いるとしているが、特に中国などの地域では、データに不備がある。無国籍問題に取り組む団体「Institute on Statelessness and Inclusion」の共同責任者であるアマル・デ・チケラ氏は、米国からバングラデシュの難民キャンプに至るまで、世界中で外国人を排斥する気運が高まっていると言う。無国籍者の増加はその影響かもしれない。市民権のない難民となれば、問題はさらに深刻だ。

「ロヒンギャという民族はその歴史上つねに迫害され続け、どの国からも認められない状況にまでなってしまいました」とデ・チケラ氏は話す。「その影響の一つに、普通の難民支援策が利用できないことがあります。国がなければ、母国に無事に送り届けるだけでは不十分です。帰る国が必要なのです」

コックス・バザールで生まれ、まだ名前がない生後18日の赤ちゃん(PHOTOGRAPH BY TURJOY CHOWDHURY)

民族紛争にばかり目を奪われているが、その巻き添えとして被害を受けているのは、国がない状態で生まれた子どもたち一人ひとりだ。チョードリ氏はそう考えている。「いつも心に浮かぶのは、ジョン・レノンの『イマジン』です。国境のない世界。それがこのプロジェクトのすべてです」

次ページでも、チョードリ氏が撮影した母と子の写真を紹介したい。

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