手持ちの服とサイズ比較 オンラインでフィット感確認
バーチャサイズ 上野オラウソン・アンドレアスCEO
通信販売で服を買う際、消費者が最も気にするのはサイズが合っているかどうかだ。価格が高ければ高いほど、サイズで失敗したくないという心理が働きやすい。アパレルの通販特有の「サイズ問題」にIT(情報技術)で挑んでいるのが、オンラインでのサイズ比較サービスを運営する「バーチャサイズ」(東京・渋谷)だ。最高経営責任者(CEO)である上野オラウソン・アンドレアスさんに事業の狙いと特徴を聞いた。
――サービスの内容を教えてください。
「当社のサービスであるバーチャサイズを使うと、ユーザーは自分の手持ちのアイテムとこれから買おうとしているアイテムのサイズを、アパレル通販のサイト上で比較できます。これにより、買う前にフィット感をイメージすることができるのです。国内ではマルイやルミネなど大手を中心に約50社に導入されています」
「もともとバーチャサイズは2011年、スウェーデンのストックホルムで生まれました。創業者が195cmと非常に背が高く、自分に合った良い服を見つけるのがすごく難しかったのです。自分の持っている服と新しく買う服の比較をできれば問題が解決すると思ったのが創業のきっかけです。日本での事業展開は13年からです。私はアジアパシフィック地域のマネジャーだったのですが、18年6月に本社が日本に移ったのを機に私がバーチャサイズのCEOに就任したのです」
■購入率が跳ね上がる
――バーチャサイズを使うことでユーザーにどのようなメリットがありますか。
「ユーザーは『この服、自分にサイズ合うかな?』と心配になると、購入をあきらめがちです。買った後にサイズ感が違っていたことがわかると、ユーザーはがっかりしてリピートしないことがほとんどです。バーチャサイズはそこを解決することができます」
「実際、バーチャサイズを利用したユーザーは利用しなかったユーザーに比べ、購入に至る率が5~10倍にも上ります。平均購入単価も20%高く、返品率は30%下がります。リピート率も4倍になるというデータが出ています」
「返品率が40%を超える欧米と比べて、日本は返品するユーザーがそこまで多くありません。ただし、日本のユーザーはそこのサイトでは二度と買わない。逆に日本では、しっかり納得できたものを買えたという経験があると、リピート率が目に見えて上がります」
■ユーザーに手間をかけさせない設計が強み
――最近ではほかにもサイズを測ってオンラインで商品を購入できるサービスが増えていますが、ほかにはないバーチャサイズの強みはどこにありますか。
「ユーザーの手間がかからない点が強みです。自分のサイズを測るのは面倒だし、他人に教えるのも恥ずかしい。だから、バーチャサイズでは購入した服、つまり気に入っている服と比べるというところに注力しているんです」
「バーチャサイズの最新バージョンでは、商品ページ内のバーチャサイズ起動ボタンをクリックせずとも、過去に購入履歴があれば、自動でおすすめサイズが表示されます。現在マルイやユナイテッドアローズなどで展開しているのですが、これぞゼロクリックバーチャサイズですね」
■服以外にもサービスを拡大
――最近では服だけでなく、財布の比較サービスも展開していますね。
「はい。18年11月より、ケイト・スペードジャパンが運営するオンラインショップで始めました。バッグや財布などのアクセサリーは、服とは少し考え方を変える必要があります。例えば、バッグであれば自分の財布やA4サイズのノートなどと比較できるようにするなど、さらなる工夫が求められます」
――そういった比較のアイデアはどこからくるのですか。
「もちろん、クライアントからの声もありますが、ユーザー調査からがほとんどです。例えば、バッグを購入する前にサイズについて一番知りたいものは何ですか?と聞くと、パソコンが入るか、A4サイズが入るか、ペットボトルが入るかなどの声があったのです」
――今後の展開は。
「まず日本での展開だと、戦える市場でのシェアを全て取ることです。また、アジアにも拡大していきます。我々は現在、韓国ではユニクロなどの大手アパレルの電子商取引(EC)サイトに導入されており、マーケットリーダーになっているのですが、今後は東南アジアでも同様にマーケットのリーダーになっていければと思っています」
スウェーデン出身。スウェーデンのウプサラ大学にて財務科学修士取得後、フロリダ大学にて経営学、上智大学にて計量経済学を学び研究学位を取得。5年間の経営コンサルティングの経験後、スウェーデンの通信機器メーカー・エリクソンを経て、バーチャサイズに入社。同社でアジアパシフィック地域マネジャーを務める。2018年よりバーチャサイズ株式会社の代表取締役に就任。
《会社概要》
社名:バーチャサイズ株式会社 設立:2013年10月 所在地:東京都渋谷区 資本金:約16億8600万円 事業内容:オンラインサイズ比較サービスの運営、開発
文:FACY編集部 岩崎佑哉(https://facy.jp/) 写真:遠藤分
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