日経エンタテインメント!

20代後半から50代の女性がメインターゲットとなる『人生最高レストラン』がある一方で、子どもからの支持も得ているNHKの『チコちゃんに叱られる!』もまた、小松氏による企画だ。コンスタントに2ケタの視聴率を獲得し、バラエティの新番組としては久々のヒットになった。

小松純也 京都大学在学中は「劇団そとばこまち」に在籍して活動。1990年フジテレビに入社。『ダウンタウンのごっつええ感じ』や『笑う犬の生活』など数々の番組を担当。2015年に共同テレビに出向し、現職。(写真:中村嘉昭)

「大人が『はっ』とする質問であり、子どもにとっても素朴な疑問で、それを共有できる。復古的なテレビの見方の誘導になっているのが大きいかなと思っています。よく『雑学番組というだけで引かれるのに企画がよく通ったね』なんて声も聞こえてきますが、そういうふうにジャンルで語る人は、『世の中で当たっているから』というスタンスでしかものを作っていないんだと思います。こだわっているのは、視聴体験です。僕らが提示したものに合意があったときに、『面白いね』という評価になる。その合意の位置が、不意をついて意外なところにあるほど、新鮮なものになる。さらに『ボーッと生きてんじゃねーよ!』と見たことのないキャラクターに叱られる構図なので、新しさを感じていただけているのかなと。

番組を作るスタンスは民放もNHKも基本変わらないです。だけどNHKさんの特殊性として、リソースがすごいある。脳について取り上げようとなったときに、脳の神経細胞のCGがすでにあったりするわけです。限られた予算の中でも、そういう素材を借りながらできてしまう罪悪感があって、わざとディレクターが誰かの作品にタダ乗りしてVTRを作っているように見せたり(笑)。そういうくだらない遊びを入れられるのも、本当にありがたいです。アナウンサーの森田(美由紀)さんの技量もNHKならでは。とにかく言葉が届く。民放のアナウンサーにああいう方はいませんから」

配信番組はブレーキのかけ方が違う

芸人同士の笑わせ合いバトル『ドキュメンタル』など、配信番組にも携わり、また違った刺激を受けているという。同時にテレビと配信番組の在り方や、テレビ界の今後について、ヒントをもらう機会にもなっているようだ。

「もちろん、配信番組はテレビとは全然違いますね。確かに下ネタと言われるような、えげつないシーンがあったりしますが、別にそこを目指しているわけではないです。彼らなりにすべてをさらけ出して、笑わせるために『そこまでやるか』っていう呆れやインパクト、くだらなさを見せるための身体表現ですから。面白いことを目指すところのブレーキのかけ方が、テレビとは違うということです。

『ドキュメンタル』を地上波で編成しようとすると、予算規模からゴールデンタイムに置かざるをえません。今までは、それだけ予算をかけられる番組は地上波にしかなかったんだけど、配信という場が生まれてきたのは大きいです。地上波で放送できないものではなく、『編成』できないものが、配信ではできるという言い方が正しいかもしれません。徹底的にくだらなさを追求するとか、積極視聴に向けたコンテンツを作れるこの状況は、ありがたいことです」

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テレビ自体を生き延びさせないと
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