自由と責任学んだ広島皆実高 メダリスト為末氏の原点元陸上選手 為末大氏が語る(下)

なぜ人はつらいのか。なぜうまくいったり、うまくいかなかったりするのか。どんな世界でもあると思いますが、スポーツは勝ち負けがはっきりします。中でも陸上競技はほとんどが個人種目で、しかも道具を使わず、身体能力がそのまま結果に表れやすい。つまり、技術と心が直接つながることが多いのです。自分自身を深く見つめた経験が、大舞台での平常心につながったのではないかと分析しています。

人間の限界と可能性を追い求める。

人間の限界と可能性を追求したい

12年に現役を引退してから、スポーツ関連の様々なビジネスを手掛けるDeportare Partners(東京・渋谷)など複数の会社の経営に携わっています。現在やっている事業は東京・江東の新豊洲Brilliaランニングスタジアムなどのランニング関連事業、企業などの依頼によるプロジェクトの企画・運営、義足の開発などスポーツ関連のスタートアップ企業への投資や支援、の主に3つです。

共通するのは人間の限界と可能性を追求すること。限界を決めているのは、実は人間の思い込みではないかと思うんですね。例えば、陸上の100メートルで10秒を切るまでは時間がかかりましたが、一人が切ると次々に後が続きました。「ああ、できるんだ」と思うと、人間は挑戦しようとする。そこから可能性が広がるわけです。

義足の開発に関わっているのも同じ理由です。将来、義足の選手がオリンピックに出場し、健常者に勝って優勝したらどうなるか。障がい者も健常者も違いはなくなり、障がいに対する考え方がガラッと変わるんじゃないか。最近はロボットや人工知能(AI)の技術が飛躍的に進歩し、人間の存在意義が脅かされている時代です。ただ、私は人間の力や努力に可能性を見いだしていきたいと思いますね。

現役時代に一度、広島皆実高で講演したことがあります。すごく足の速い子がいて「僕はオリンピックに出られますか」と聞かれ、私はこう答えました。「先は長いよ」と。自分が今、まさにその言葉を実感しています。そして、その子がいつか、ピンチのときにその言葉をふっと思い出してくれたらいいなと思っています。

(村上憲一)

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