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自分で動く若手営業の育てかた

「むやみな営業、顧客に迷惑」動かぬ若手を変えるには リクルートマネジメントソリューションズ 的場正人

2019/2/7

そうであれば、低利の分割ローンや、導入設定の代行や利用方法を教えるサポートを提供できれば、うちの商品を使ってお客様の困りごとを解決できるかもしれない。

これは新人時代の私にとってとても大きな気づきだった。そこから私は、営業担当の最大の役割は、お客様の表面的な言葉ではなく、その言葉の裏にある真意や本音を察してさしあげることだと気づいたんだ。

それがわかってから、いままで断られて終わっていたのが少しずつ商談につながるようになった。『断り文句』だと思っていた言葉が、『チャンスキーワード』に変わっていったんだ。そういうことがわかり始めて、ようやく受注をいただけるようになってきた」

東さんは言いました。「そうか……。最初は迷惑に思われるかもしれないけれど、そこを越えて本音を聞けるようになることが、お客様の真のお困りごとにも気付けるようになって、お役に立てるようになることにつながるわけですね」

「そのとおり!」

「でも、それなら最初から、『“お金がなくて買えないからいらない”“そんなのあっても使いこなせないからいらない”って言われたら、こんな風に提案して』といったパターンを教えてくれればいいじゃないですか」

「確かに東さんの言うことにも一理あるね。でもね、東さんの成長のことを考えると必ずしもそうではないと思うんだ」

■あえて「パターン化しない」理由

東さんは、不思議そうな顔をして神田さんを見ました。

「東さん、飢えた人に魚を与えたらどうなるかな?」

「えっ、そりゃ、むしゃぶりつくように食べますよね」

「そうだよね。では、食べ終わったらどうなる?」

「また、飢えますね……」

「そうだよね。若い人に最初からなんでも教えるというのはこれと同じことなんだ。応酬話法のように、こう言われたらこう返すというのは、いくら教えてもキリがない。では、飢えた人に魚の釣り方を教えたらどうなるかな?」

「一生食べていけますね!」

「そのとおり! 私が新人時代、お客様に断られ続けた日々の中からつかんだ最大の宝物は、この“魚の釣り方”なんだ。

本に書いてあることや、ネットで調べてわかること、勉強会で教わることではなくて、自分の足を使って動き回り、お客様の生の声からしか見えないものをつかむ。その力が備われば、エリアが変わろうが、商材が変わろうが、新しいキーワードを自分で見つけていけるようになり、どんな仕事でも通用するようになる。だから『とにかく回れ』という言い方をしたんだよ」

■ていねいな説明が、行動を変えた

ここまで話すと、東さんの目の色が変わりました。

「できるだけお客様のご迷惑にならないよう、ちょっとでも“予習”しておこうと思って、エリアのお客様一件一件についてネットで調べたりしてみたんですけど、どこも中小なのでネットには全然情報がないんです。そうしているうちに、断られるのが怖くなってなかなか足が動かなくなって……。

相変わらず断られるのは怖いですが、断られる言葉の中にも、お客様の困りごとのヒントが隠されているんですね。明日から頑張ってみます」

ここまでていねいに説明しないと、理解してもらえず、行動は変わらないものなのかと神田さんは驚きました。しかし、少し面倒ではありましたが、翌日からの東さんの行動は大きく変わったのです。オフィスでパソコンの前に座っていることがほとんどなくなり、訪問件数がどんどん増えていきました。

的場正人
リクルートマネジメントソリューションズのエグゼクティブコンサルタント。1971年生まれ。93年に北海道大学を卒業し、リクルート入社。96年より現在のリクルートマネジメントソリューションズに在籍し、営業の最前線で98年から2001年まで4年連続でMVP、VPを受賞。現在は営業コンサルタントとして企業の営業組織強化や人材教育に携わる。

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