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ペットにしていいのか カワウソ人気で密猟が横行

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/2/9

ナショナルジオグラフィック日本版

東南アジアでペットとして人気のコツメカワウソ。インドネシア、タイ、日本などには、数十万円支払って購入する人もいる(PHOTOGRAPH BY SUZI ESZTERHAS, MINDEN PICTURES)

ひもにつながれて散歩。ベッドで眠り、ボールで遊び、ぬいぐるみにしがみつく――何のペットかわかるだろうか? 犬、猫、ウサギ、ハムスターではなく、このペットは東南アジア原産のコツメカワウソだ。このカワウソは「さくら」の名で、日本の家庭で飼われている。さくらの動画がYouTubeやTwitterに投稿されると、またたく間にソーシャルメディアで拡散し話題になった。

野生のコツメカワウソは、小川やマングローブで魚や甲殻類を捕って暮らしている。この動物が今、同じ東南アジア原産のユーラシアカワウソ、ビロードカワウソ、スマトラカワウソとともに、ペット取引で人気を集めている。一番人気なのがコツメカワウソで、インドネシア、タイなどの東南アジア諸国で捕獲され、地元だけでなく他国でペットとして販売されていると、研究者は考えている。

野生生物取引を監視するNPO「トラフィック」東南アジア支部のカニタ・クリシュナサミー氏は「不運なことに、カワウソの愛らしさが、人を魅了します」と話す。「ペットとして、カワウソは今大人気です」

東南アジアのカワウソは賢く、細身の小さな体にずんぐりした四肢と愛らしい顔をしていて、外見も魅力的だ。この生き物をペットにするために、喜んで数十万円を支払う人は多い。

「トラフィック」が発表した最新の報告では、2018年1~5月中旬に東南アジア5カ国のFacebookを調べると、700匹以上のカワウソが販売されていたことが判明した。その大部分が、若いコツメカワウソだ。コツメカワウソは爪の長いほかのカワウソより体が小さく、体重は5キロ足らずだ。

先に紹介した東南アジアに生息する4種のカワウソは、今のところ絶滅の危機にはない。しかし、数が増えているかというと、それも違う。殺虫剤の摂取、開発によって生息地が失われるなどの問題に直面しているからだ。高密度の毛皮がコートや帽子の素材として珍重される中国向けに密猟も横行している。また、アジアの一部では、カワウソの血や脂、骨に「癒やしの力がある」と信じられ、こうした需要が密猟を後押しする。

しかし、トラフィックの報告書では、密猟の一番の原因はペット取引だという。

■輸出には許可が必要

人が飼育する環境でカワウソを繁殖させることは、可能ではあるが「実際には難しい」とクリシュナサミー氏は言う。子と親を健康に育てるには、カワウソ専用の餌を与える必要があるし、さらに犬ジステンパーなどの感染症の予防接種もしなくてはならない。

米オレゴン州コーバリスにあるオレゴン州立大学でカワウソの生態を教えるニコール・デュプレイックス氏は「猫を繁殖させるのとはわけが違いますよ」と話す。デュプレイックス氏は国際自然保護連合(IUCN)カワウソ専門家グループの会長も務める。

東南アジアのほとんどの国には、カワウソを守るため、捕獲、販売、所有、輸送を禁止する法律がある。コツメカワウソ、ビロードカワウソ、スマトラカワウソは、いわゆるワシントン条約、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)」の「付属書II」に掲載されているため、輸出には許可が必要だ。「野生の個体を捕獲しても種の存続は脅かされない」と原産国の政府が判断した場合のみ、輸出が許可されている。

一部の国は、カワウソの国際取引を禁止したいと考えており、2019年5月に開催されるCITESの会議で、コツメカワウソとビロードカワウソを商業目的の国際取引が禁止される付属書Iに移す提案が話し合われる予定だ。なお、ユーラシアカワウソは1977年から付属書Iに掲載されている。

現在でも、制約があるにもかかわらず、ソーシャルメディアでは、カワウソの違法取引が盛んに話題になり行われている。毒グモから大型ネコ科動物、話す鳥まで、いわゆる「エキゾチックアニマル」がソーシャルメディアで広まり、売買は以前より容易になっている。

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