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営業なくし杜氏は社員 湘南の酒蔵社長、逆転の経営術 熊沢酒造 6代目熊沢茂吉社長(上)

2019/2/5

熊沢酒造 6代目熊沢茂吉社長

神奈川県茅ヶ崎市の熊沢酒造は1872年に創業した酒蔵だ。敷地内にはお酒と食事が楽しめるレストランやカフェ、湘南のアーティストたちが集うギャラリーもあり、県内外からひっきりなしに客が訪れる。26年前、社会人経験もないまま会社を叔父から継いだ6代目社長の熊沢茂吉さん(50)は、営業部門は廃止し、出稼ぎの杜氏(とうじ)に頼る酒造りをやめるという独自のやり方で、業績不振にあえいでいた酒蔵を盛り返してきた。

■自ら酒を売り込むも、評判の悪さに驚く

熊沢酒造には営業部門がない。モノを作って売る商売なのに営業をあえておかないのは、熊沢さんが会社を継いだ直後の苦い経験があるからだという。

1993年1月、米国留学中だった熊沢さんは、深刻な業績不振に陥っていた熊沢酒造の経営を引き継いだ。まだ24歳の時である。大学卒業後、就職せずに米国に渡ったため、社会人経験はゼロだった。

入社当時、社員は自分の他に4人だけ。酒造りは冬になるとやってくる出稼ぎの杜氏に任せていた。いわゆる伝統的な酒蔵の経営形態だった。

「業績不振ってことは売れていないわけだから、とにかく売らなくちゃと思った」。いきなり社長になった熊沢さんはまず、売り込みに出かけた。ところが、評判がすこぶる悪かったという。「肝心の酒はもちろん、営業担当の評判もひどかった」

熊沢さんによると、当時の造り酒屋は「きつい」「帰れない」「給料が安い」の3Kの職場。バブル期に良い人材が集まるはずもなく、一筋縄ではいかない社員たちばかりだった。「社員が仕事中にお酒を飲んじゃったり。お酒を卸している酒店のご主人を殴ってしまったという事件もありました」

とにかく従業員にちゃんと働いてもらおうと朝礼を始めたが、朝に定時に出勤してくる人もいない。そのうち一人また一人と社員は辞めてしまった。

バブル崩壊後で、伝統産業を守ろうという機運が出てきた時期だったことは幸いだった。求人情報誌に広告を出したところ、人は集まった。

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