実話だからこそ面白い『いだてん』 悲哀や挫折にも光

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1月6日からスタートしている大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』。明治から昭和30年代までの近現代を舞台に、コメディー色の強い物語が繰り広げられる。時代劇が主だった大河ドラマでは異色の作品で、従来とは違う見どころも多い。制作統括の訓覇圭氏に番組制作の意図を聞いた。

『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(日曜20時/NHK総合)

脚本家・宮藤官九郎のオリジナル作品となる『いだてん』では、1912年のオリンピック初参加から64年の初開催まで、半世紀の歴史が綴られる。大河ドラマで近現代を舞台にするのは33年ぶり。全47回中、24回までの前半は「オリンピックに初参加した男」の金栗四三(中村勘九郎)、25回からの後半は「オリンピックを呼んだ男」の田畑政治(阿部サダヲ)と、2人の人物を主人公に物語が展開される。

もともとオリンピックは欧米のみで開かれていたが、1900年代初頭に日本に参加の声が掛かる。目的は、スポーツは勝敗を競うだけでなく、参加することに意義があり、他国との交流を図ってほしいというオリンピック精神を世界各国に広めるため。そこで当時、アジアで強い影響力を持っていた日本に白羽の矢が立った。12年のストックホルム大会を経ての36年のベルリン大会、さらに戦後、招致活動の努力の末、64年に東京オリンピックが開催されるまでが秘話を交えて描かれる。

宮藤がNHKで連ドラを手掛けるのは、社会的なブームとなった連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)以来のこと。制作統括の訓覇圭や演出の井上剛、音楽の大友良英らスタッフ陣も、『あまちゃん』の制作チームとなる。

訓覇氏は約4年前から宮藤と構想を話しながら、少しずつ取材を重ねてきたと明かす。「調べれば調べるほど、興味深いエピソードが見つかる。できるだけドラマに織り込みたいですが、宮藤さんとは『ネタと思われたら悔しいですね』と話しています」。第1回では、金栗の盟友となる三島弥彦(生田斗真)が仲間たちと結成した「天狗倶楽部」なるチームが登場。メンバーのジャケットにはTNGと書かれたワッペンが貼られており、これは実話から採用した。「当時から言葉を略す文化があったことに驚きました」(訓覇氏、以下同)。

フィクションならではの面白さはもちろんあるが、ベースは史実に基づいている。そのため、「時系列はどうにもならないし、事実は動かせない。それで宮藤さんが悩むときはあるようです。縛りでもあり、同時に魅力でもあります」。

冴えない面にも光を当てる

金栗と田畑はオリンピックの素晴らしさを伝えてはいくものの、数々の挫折や敗北を味わう。金栗は優れた脚力を持ち、ストックホルム大会で金メダルを期待されるも、大惨敗。4年後の大会で雪辱を晴らそうとするが、第一次世界大戦でベルリン大会が中止となり、その夢を果たすことができなかった。後半の主人公となる田畑もあまりに強烈な性格ゆえ、最後は組織委員会から外されてしまう。そんな悲哀や冴えない面にも光を当て、決して偉大な人物ではなかった主人公たちの姿をユーモアを交え、真正面から描いていく。

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