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だしと素材だけで驚きの味 ラーメンは今や創作料理だ

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NIKKEI STYLE

ラーメンは「創作料理」である。私はラーメンをこよなく愛し、これまで1万4000杯超のラーメンを食べ、名店発掘をライフワークにしている官僚だ。今回から、「ラーメン」という食ジャンルを題材としたコラムの執筆をお任せいただくこととなった。記念すべき1回目に、創作料理としてのラーメンの魅力を語ることに決めた。

グルメガイドの世界的権威である『ミシュランガイド』にラーメン店が掲載されるようになり、もはやラーメンは創作料理の一分野と見なして差し支えないと信じる。ここで、現在のラーメンは、どれほど創作料理の世界に迫っているのかを示す好例として、2018年の上半期と下半期を代表する2軒の名店にご登場いただこう。

【本郷】中華蕎麦にし乃

時代に左右されない昔ながらの街並みが情感をそそる東京・本郷の路地裏に、1軒のラーメン店がたたずむ。その店の名は「中華蕎麦(そば)にし乃(の)」。18年2月17日にオープンした若き実力店だ。

「歴史と文化の街・本郷にふさわしい、歳月の流れに翻弄されない普遍的な1杯。それこそ、同店が追い求める中華そばのイメージです」と語る水原店主。

手掛ける麺メニューは「中華そば」と「山椒(サンショウ)そば」。以前は3種類あったが、19年1月現在は2種類に絞り込んでいる。スープと麺は、各メニューで共通。スープは、大量のカタクチ・セグロ・白口煮干しに昆布・シイタケを加えただしをメインに、2種類のだし(動物系だしとアサリだし)を提供直前に注ぎ込んだトリプルスープ(Wスープの発展型)だ。

看板メニューは「中華そば」。レンゲを口元へと運んだ刹那に伝わる、明瞭かつ上質なうま味は我を忘れさせるほどだ。ここまで圧倒的なうま味は、スープ中の雑味を完全になくすことで初めて実現する。食べ手は、店主の創作技術の高さをまざまざと見せ付けられることになる。

スープに注ぐ仕上げ油は、加熱して液状となったラードにカツオ節を溶け込ませた、風味豊かな逸品。ラーメン界の名門・村上朝日製麺所のストレート麺を伝い、口元へと届けられるうま味の奔流に抗することができないだろう。

【東銀座】中華そば銀座八五(はちごう)

18年12月8日、東京・東銀座の路地に1軒の新店が誕生した。店名は「中華そば銀座八五」。「八五」という独特の屋号は、「八」の字を名峰・富士に見立て「五」合目から山頂を目指すとの意を込めたもの。

松村店主は語る。「この店は、私自身の職人人生の集大成として、最高の1杯を提供するための場。腕に磨きを掛け、作り手としての頂点を極める。不退転の決意を屋号に込めました」

そんな同店の基本メニューは「中華そば」。残すことができないスープを創るという、自身が設定した高いハードルを乗り越えるため、職人人生で培った知識と経験の全てを動員して開発に取り組んだ。その結果、スープの素材として、カモ・名古屋コーチン・生ハム・昆布・干しシイタケ・ドライトマト・イタヤガイなど、ひとひねり利いた食材の数々を選抜した。「それぞれの素材から抽出される成分はもちろん、複数の素材が一体化した時に生じるうま味も徹底的に検証しました」。こはく色に輝くスープは、そんな試行錯誤のたまものだ。

肝心の味の方も秀逸。スープをひと口すすっただけで、あまりものおいしさに鳥肌がゾクリ。上質で明晰(めいせき)なうま味は、スープを飲むためにレンゲを動かす手間すら惜しまれるほどだ。

さらに特筆すべき事項がある。実はこのスープ、タレを全く使っていないのだ。「通常、タレはスープの味の要です。なので、普通はタレが必要ないという発想には至らないものですが、出来上がっただしを試飲した瞬間、このだしにタレは要らないと確信しました」。こちらの「中華そば」では、素材のひとつである生ハムの塩味がタレの代役を果たす。松村店主にしか思い付かない驚きのギミックだ。

ここで、現在に至るまでのラーメン界の変化を簡単にご紹介しよう。

私が本格的なラーメン食べ歩きを開始したのは95年。今から20年以上前のことになるが、私が実体験をもってラーメンを語ることができる同年から現在までの期間だけをフォーカスしても、ラーメンは、おそらくほかのグルメとは比較にならないほど劇的な変化を遂げた。

最も顕著な変化は、味の多様化だろう。95年時点における典型的なラーメンは、鶏ガラ・豚骨・野菜からだしを採ったスープに、黄色い中華麺やチャーシュー・メンマを合わせたものというのが相場。味の方向性はタレと油で決まり、だしというパーツは、ほとんど注目されていなかった。

ところが96年を境に状況は一変する。東京・中野の実力店「中華そば青葉(96年創業)」の店主が、カツオ節、サバ節、煮干し、昆布などから単独で採った魚介だしを、客に提供する直前に、豚骨・鶏ガラから採った動物系だしと丼で一体化させる「Wスープ」の手法を開発。これにより、魚介だしの特徴である香りの良さと、動物系だしの特徴であるコクの豊かさを併せ持つラーメンを作ることができるようになったのだ。

Wスープの手法は、単に1杯のラーメンの味を変えただけではない。イワシ、カツオ、アジ、サバからサンマ、タイ、貝類に至るまで、使用できる素材にバリエーションがある魚介だしを積極的にスープに導入できるようになったことで、味の多様化が劇的に進んだ。

多様な味を創り出せるようになれば当然、店主の裁量の幅は飛躍的に広がる。2019年現在、だしに用いる素材や麺の種類から、具として何をのせるかに至るまで、ラーメンのカタチは店舗によって千差万別。ビジュアルを見れば、それが誰の手によるものかさえ分かるラーメンまで誕生し、事実として、ステレオタイプなラーメンのイメージはどこにもない。

力が入り、話が少々堅苦しくなってしまったが、ご容赦いただきたい。読者の皆さんに、ラーメン界の奥深い歴史を多少なりともご理解いただければ幸いです。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。

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