見波氏は「部下を敬遠する意識は、上司に求められる人材育成などの本来の役割を弱めてしまう。結果的にチームのパフォーマンスが下がり、一体感も薄れる」と述べ、「逃げ腰上司」の増加を懸念する。書籍のタイトルでもある「やる気がそがれる職場」とは、こうした上司の下で、部下がリーダーを認めず、求心力が失われかけた状態だという。

見波利幸氏

見波氏はこうした上司が生まれる原因として、企業の人事評価制度を挙げる。たとえば、営業現場では売上高などの目に見える数値目標があり、その達成率が評価に直結する。昇進にもこうした手柄が物を言うから、声の大きいスタンドプレーヤー型の人材が出世のチャンスをつかみやすい。だが、そうしたキャラクターや行動原理が部下の育成に向くかどうかは別だ。

昔の自分と今の部下、比べてみても…

「自分の実績に誇りを持つタイプの上司は、部下にとって時に危険な存在になり得る」と、見波氏は警戒を促す。自分の経験が他人を評価する主な軸になっているため、「どうしてこの程度の仕事がこなせないんだ(俺はもっとたくさんやっていたのに)」と、強いプレッシャーをかけがちだ。昔と今の違いも考えず、無理な注文で怒鳴られる部下はダメージを負う。

見波氏は「現代の20、30歳代はストレス耐性が昔より低くなっている」と話す。「昭和の昔は、上司にどやされても『なにくそ』『見返してやる』と反発して力を発揮する若手がざらにいたが、今ではそのまま崩れ落ちてしまう若手が珍しくない」と明かす。

部下にとっては、直属の上司が最も身近なロールモデルとなりやすい。それだけに仕事のやる気やキャリア形成の展望なども、上司のありように左右されがちだ。企業としては、若手に将来の展望を示すなど、視野を広げさせ、「上司フィルター」の影響力を弱めてやる必要がありそう。見波氏は「メンタルヘルスの諸問題を避けるうえでも、将来のビジョンの有無は大きな差になってくる」と説く。

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