
トラッドの基本をなすアイテムでありながら、日常で見かける機会が意外と少ない黒のニットタイ。しかし、このタイが“基本のき”とされるのには相応の理由があり、洒落者はいつの時代もこよなく愛する。ストイックな趣、気取りのなさ、合わせを選ばない万能性……etc.トラッド気分が再燃している今だからこそ黒ニットタイの真価に触れ、往年のウェルドレッサーよろしくいい男を極めようではないか。
愛用歴50年のウェルドレッサーに訊く

1976年、29歳の若さで東京・青山にタイブランドの「フェアファクスコレクティブ」を設立する。ファッションはもとより映画や音楽への造詣が深く、ウェルドレッサーとしても世界から注目を集める。
「ニットには、陰影がある。黒だとなおさら。だからシンプルでも深みが出る」
あらゆる色を、装いを引き締める究極の万能タイ
黒ニットタイはトラッドの基本であり、古きよきダンディズムの象徴である。しかし、時代の空気に敏感な洒落者は、今再び気分だと言う。タイブランド、フェアファクスコレクティブの代表であり、黒ニットタイの愛用歴は50年超という慶伊道彦さんも、その1人だ。
「メンズの世界に色が戻ってきているでしょう? 黒はどんな色にも合うから重宝しますし、それに黒というのは、実は最も強烈な色なんです。1つ入れるだけで、あらゆる色を締める力がある。だから黒ニットタイは今、最も使い勝手のいい、新鮮な存在だと思います」
慶伊さんは、黒のニットタイが持つ魅力として“陰影”を挙げる。
「ニットタイには、織りのタイにはない陰影がありますよね。黒だとなおさらこれが強まる。シンプルでも深みが出るのはそのためです。また、表情があるので、秋冬モノにも合わせやすい。万能なんです。僕は旅行へ行く際にも必ずこれを選びます。装いを選びませんし、これ1本あれば事足りますから」
では、そんな慶伊さんにとっての黒ニットタイとは――?
「戦でいう“兜”のようなもの。結ぶと、顔も気持ちも締まるんです」


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