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フランスで気づいた日本料理の真髄 菊の井村田吉弘氏 菊の井代表取締役 村田吉弘氏(上)

2019/1/2

『ミシュランガイド京都・大阪+鳥取2019』で京都本店が三つ星を獲得した菊の井の村田吉弘代表取締役

京都に本店のある料亭「菊乃井」の三代目村田吉弘(むらたよしひろ)氏は、料理人であり経営者であるだけではなく、日本料理界を率いる中心人物の一人だ。「和食」のユネスコ無形文化財登録を成功させた功労者としても、世界の料理界から注目をあびている。村田氏にこれまでの歩みと日本料理を世界に向けて発信する活動について語っていただいた。活動の原点には、海外遊学中に日本料理の真価と可能性を認識した経験が強く影響していた。

――菊乃井本店はミシュランガイドの三つ星の常連です。

おかげさまで10年連続になりました。ミシュランガイドは同じ国で同名の複数店に三つ星をつけないルールなんで、赤坂(東京)、露庵(京都市下京区木屋町)は二つ星です。献立も料理内容も同じやのにね。

――料亭の長男に生まれながら、大学在学中にフランスに料理修業に行きました。どうしてフランスだったんですか。

菊乃井の跡取りになるんがうっとうしかって、逃げよと思たんです(笑)。子供の頃、誕生日に連れて行ってもろてたレストランの料理がおいしかったし、お袋が結婚前にフランス料理を習ってて、ベシャメルソースやドミグラスソースを作って、クリームチャウダー、ガランディーヌ、コキール、グラタンやらを家で食べさせてくれてた。僕も小学生のときから妹や弟に洋食を作ってて、「お兄ちゃんの料理が一番おいしい」と言われてたから、フランス料理のコックになろうと短絡的に思ったんです。

――二代目であるお父様は反対しなかったですか。

親父は「お前みたいなもんはあてにしないから、フランスに行って就職先を探して来い」と言いました。私は道楽息子でしたから(笑)、外に出て頭を打ってきたほうがいいと思ったかもわかりませんね。フランスでは安ホテルに滞在して、日本人留学生や外国人学生と友達になって、ええレストランを教えてもうて、就職活動らしいことをしました。

ある店の厨房を見学させてもらうと、料理人がカモをさばいて流れ出る血をフランスパンにつけて食べて、ワインを飲みながら仕事している。丸ごと一頭のシカや野ウサギの皮をはいでいる。ものすごう臭いんです。気持ち悪なって、僕にはフランス料理は難しいなと思いました。

本当の転機になったのは、フランス人の学生に「日本料理でそばとすしを食べたけど、炭水化物ばかりで日本人はよく栄養失調ならないな」と言われたことです。僕は、「日本料理には会席という、フランス料理とクオリティーが変わらんコース料理があって、うちの親父やじいさんはそれを作って来たんや」と必死に説明した。逃げ出したはずの日本料理を擁護している自分に気づきました。

数日後、公園の隣のベンチでお母さんが幼児に離乳食をあげているのを見た。白いものをぐちゃぐちゃにして食べさせているから、豆腐だと思って聞いたら、子羊の脳みその塩ゆででした。こういう離乳食で育った人らと一緒にフランス料理の修業しても、一番にはなれへん。一生かけてやる仕事で、彼らのケツを見て歩くのはいややと思って、日本に帰ることにしました。

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