永野芽郁 『半分、青い。』で得た演技の変化とは
2018年4~9月に放送されたNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『半分、青い。』で、学生時代を経て、結婚・出産・離婚・起業と様々な経験をする主人公・楡野鈴愛を43歳まで演じきり、新世代の主演女優筆頭に浮上した永野芽郁。『半分、青い。』での経験で得た演技の変化や、これから取り組んでみたい役について語ってくれた。
朝ドラ放送開始前の日経エンタテインメント!18年2月号のインタビューでは、撮影が長期にわたることに対しても「大丈夫な気がする」と語っていた。無事に"完走"した今、改めて当時の自身の発言から振り返ってもらった。
「ずっと強い気持ちでやれていたわけではないのですが、結果的にはあのときの言葉通り、結構大丈夫でした。あと1年くらいは朝ドラのヒロインができそうな感じです(笑)。
もちろん大変なときもありました。律(佐藤健が演じた萩尾律)にふられたり、マアくん(中村倫也が演じた朝井正人)にふられたりと、1週間ずっと泣くシーンを撮っていたときは、目の腫れもひかないし、体から水分がなくなるほど体力的にも大変で。それでも鈴愛の感情になれば自然と涙が出てくる自分に、『私って、意外と大丈夫じゃん!』と、冷静に見られていたりもしたんですよね。
本番中に、急に相手の声が聞こえなくなったこともありました。役に入りすぎたのもあるだろうし(鈴愛は小学校3年生のときに病気で左耳の聴力を失ったという設定)、たまった疲れが耳に偶然出たのかもしれないですけど。でもそのときも『今、自分はちゃんと鈴愛として生きられているんだなあ』と前向きな気持ちのほうが強かったんです」
お母ちゃんの言葉が支えに
同じ朝ドラ前のインタビューで永野は、「絶対に忘れられない作品になるだろうなと思います」と自身の未来を予測していた。
「やっぱり忘れないですよね、いろんな意味で。経験したくても誰もができることではないですし。母親役の松雪泰子さんには、撮影に入ったときからずっと『何かあったら、お母ちゃんが守るから』と声をかけてもらっていて。その言葉に撮影期間中はすごく助けられました。
また共演者の方たちも、私よりもセリフが多いときもあるのに、常に最初に私のことを考えてくださる方ばかりで。その人たちのためにも頑張ろうという気持ちが自分のパワーになっていました。つくづく共演者の方に恵まれていたんだなと思います」
朝ドラがクランクアップして約1カ月半後には、主演映画『君は月夜に光り輝く』(19年3月公開)の撮影がスタート。北村匠海とW主演する今作で、永野は死期が近づくと肌が光る不治の病で入院している少女・渡良瀬まみず役で出演。1月からは菅田将暉主演の連ドラ『3年A組‐今から皆さんは、人質です‐』(日本テレビ系)でもヒロインを演じている。
朝ドラを経て、演技に対する取り組み方に変化はあるのだろうか。
「朝ドラは共演者が先輩だらけなので、自分がセリフを間違えてしまうことで、同じシーンをまた繰り返してしまうという恐怖感が最初はありました。でも、それも全部受け止めてくださる先輩がいると分かってからは心に余裕が生まれて、今は何が起きても動揺しなくなった気がします。
台本のセリフ覚えも早くなりました。朝ドラでは1週間分ずつセリフを覚えるのですが、最初の頃は前の晩からリハーサルの1時間前まで10時間以上もかかっていたんです。でも最後のほうでは、それが数時間くらいで覚えられるようになって。たぶん役が体に入りきって、相手をイメージしながらセリフを覚えるようになったのが、大きかったのかなと思います。
あと、少しずつ演出家さんの目線で見られるようになってきた気がします。台本の中ではリアルな世界じゃない分、普通では起こらないことが起きやすく、映像にするとちょっと非現実的に見えてしまうことがあるんです。以前は、そういうシーンについて、『これ、どう思う?』と監督さんや共演者の方に聞かれて初めて気づいていたんですが、今は台本を渡されて読んだときにパッと直感的に分かるようになってきて。自ら率先して相談できるようになりました。朝ドラの撮影現場で、スタッフさんたちがいろんな案を出しながら作り上げていくのを見てきたので、自分の中のレパートリーも増えてきているんだと感じています」
いつか楽器を演奏する役を
この1年での成長を実感できている彼女は、これから一体どんな役を演じ、どのような女優を目指したいと考えているのだろうか。
「今後は、何かに葛藤しているような役を人間味たっぷりに演じてみたいです。あとは音楽が好きなので、楽器を演奏する役! 『楽器をやっています』といろんなところで言ってはいるんですが、なかなか機会がないようで(笑)。今はドラムをやっていて、ギターも近いうちに再開します!
最近よく聴いているのは、落ち着いたバラード系だと、サム・スミスさん。いつも聴きながら『アコギで弾き語りできたらいいな』と思っています。元気を出したいときには、女性シンガーソングライターのあいみょんさんや、Aimerさんのパワフルな歌声に励ましてもらったり。あとバンドだと、ウルフルズさんの曲を聴くと『頑張ろう!』って気持ちが湧いてきます。
こういう女優になりたいという理想像や目標は特にないんです。ただ、作品の中で一瞬しか出ない役でも構わないので、『この役を他の人がやるのは悔しい』と思えるような役を、今後も演じていくことができれば幸せだなと思います。『半分、青い。』を超えられるぐらい、強い愛着を持てる作品をこれからどんどん作っていきたいですね」
(ライター 高倉文紀)
[日経エンタテインメント! 2019年1月号の記事を再構成]
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