そう言われると、相談に行くといつも嬉しそうな表情になるのを思い出し、先輩のアドバイスに納得したという。
「上司の心のケア」としてのホウレンソウ
このことが、私が「上司の心のケアとしてのホウレンソウ」というものを提唱し、推奨する理由である。
一般にホウレンソウというと、上司は部下一人ひとりの仕事の状況を把握しておく必要があるからホウレンソウが必要なのだというように、その実務的な意味が強調される。
だが、その心理学的な意味も無視できない。それが、上司の心のケアとしての意味である。
上司の心の中には、自分は部下から尊敬されているだろうか、部下がついていきたいと思う上司になれているだろうか、部下から軽く見られていないだろうか、といった不安がある。
そのため、部下から頼られると、必要とされていると実感でき、不安が和らぐ。ゆえに、上司にホウレンソウを欠かさないことは、上司の心のケアになるのだ。
とくに持ち上げられたがりは、ほんとうは自信がなく、心の中に大きな不安を抱えているために、頼られることがとても大きな心理的報酬になるのである。
ポイントを押さえれば扱いやすい面もあるものの、機嫌を損ねないようによけいな配慮をしなければならないところがほんとうに面倒くさい。
榎本博明
心理学博士。MP人間科学研究所代表。
1955年東京生まれ。東大卒業後、東芝勤務をへて都立大大学院心理学専攻博士課程中退。大阪大学大学院助教授などをへて現職。著書に「『上から目線』の構造」など。

1955年東京生まれ。東大卒業後、東芝勤務をへて都立大大学院心理学専攻博士課程中退。大阪大学大学院助教授などをへて現職。著書に「『上から目線』の構造」など。
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