『機動戦士ガンダムNT』 「初代」の富野イズム継ぐ
富野由悠季原作・監督により1979年に誕生した「ガンダム」シリーズの最新映画『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』が公開中だ。ガンダム作品には独自の世界を舞台にしたものも多いが、『NT』は第1作目から続く「宇宙世紀」を舞台にした長編映画としては27年ぶり。富野監督に学んだという吉沢俊一監督に話を聞いた。
『NT』は『亡国のイージス』で知られる作家、福井晴敏の小説を基にしたOVA『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』(2010~14年)の、その後を描いた外伝小説『機動戦士ガンダムUC 不死鳥狩り』を素材に大胆に再構築。福井自らが脚本を手掛けた。
『UC』の物語から1年後、人智(じんち)を超えた能力を持つモビルスーツ(ロボット)「フェネクス」が突如姿を現し、様々な組織によるフェネクス争奪戦の火蓋が切られる――。
監督の吉沢は『ガンダム Gのレコンギスタ』(14年)で富野の傍らで学んだ。まず小説を読んで、「ストーリーの構成や描かれている情景がすごくきれいで、今回の要素の一つとして大切に映像化しようと思った」と話す。そのうえで表現したい戦いのシチュエーションなど新たな映像の断片を福井に伝え、最終的な脚本に落とし込んでいった。
「例えば冒頭23分の戦闘。フェネクスは、一見すると"お化け"のような動き、ビジュアルです。その対になる機体として福井さんのイメージによる(主人公機の)ナラティブガンダムを設定。小説タイトルの"狩り=ハンティング"を意識して映像を作りました」
作品のシンボルでもあるナラティブガンダムのコンセプトは「痩せっぽち」だ。「主人公のヨナの心情とリンクしていて、戦いのなかでパワーアップするのではなく、いろいろなものをそぎ落としていきます。ストーリー、キャラクター、メカ、全てがリンクしている点にも注目していただければ」
そして自身の中の「富野イズム」と、新たな挑戦について語る。「物語を軸にキャラクターや映像を構築していくのは、僕が富野さんから学んだことの一つ。アクション映像は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88年)を意識し、スピーディーでカッコいい画を目指しました」
そこで『NT』らしさを探ったことの一つが、カメラの置き位置をちょっと変えてみること。「例えば(巨大な宇宙居住区を地球に落とす)『コロニー落とし』はこれまでも描かれてきましたが、今作ではカメラを地球側に置いて、主人公たちの目線で、何が起こっていたのかをしつこいくらいに描写し、心情を浮き彫りにしています」「映像は感じるものだと思っています。『ガンダム』や前作の『UC』を知らない方も(映像を)浴びるように"感じて""見て"ほしいです」
(「日経エンタテインメント」12月号の記事を再構成 文/山内涼子)
[日経MJ2018年12月14日付]
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