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プロもアマも愛用する 「グローバル」の国内限定包丁

日経トレンディネット

2019/1/7

飯田: プロの間でもステンレスの包丁を使う人が増えている。特にオープンキッチンが増えているので、手元を美しく見せる包丁としてステンレスのニーズも高まっているんです。イストはそんなプロにもジワジワと浸透しています。

小野: おかげさまで、グローバルの売り上げの大半は海外需要だったのですが、現在は、国内売り上げにおいて約2割がイストになりました。

対談を行った六本木の「YOSHIKIN SHOP」には、グローバルの全シリーズがそろう

■子どもに包丁教育を

飯田: プロでは包丁の使い分けは当たり前ですが、それをイストではあえて前面に出していますよね。

小野: プロは食材や切り方によって包丁を使い分けます。それによって、大きさがそろうし、食材の切断面がきれいで、食感も生きてくるんです。だからプロの料理はおいしい。道具を使い分けると料理のおいしさが変わる、食べた人が喜んでくれる、そうすると、調理をする楽しさが生まれてくる。調理道具の在り方はそこが大きなポイントだと思うのです。

飯田: 確かにそうですね。だから調理道具を使い分けるのが面白いんです。

小野: 包丁は料理の出発点ですよね。切ることが楽しくなると、次にいためたりするのが楽しくなる。そうすると仕上げもこだわりたくなる。そしておいしいと言ってもらえるとうれしいじゃないですか。幸せの連鎖を始めるのが包丁だと思っています。

飯田: 小野さんは包丁を使って調理をしますか。

小野: おいしいと言われることは、まだあまりないのですが、家庭での刺し身担当は私です。子どもと一緒に市場に行って魚を選び、家でさばいて刺し身にします。家でさばくから、刺し身は新鮮でおいしいんです。そういう調理の過程を子どもに知ってもらうことで、子どもも面白がって調理をしてくれるようになりました。

飯田: 包丁教育ですね。

小野: 父親と娘って、なかなか料理を一緒に作らないですよね。でも市場に行ったり、魚をさばいたりすると興味をもってくれる。コミュニケーションにもなります。

飯田: 私も料理道具はコミュニケーションツールだと思います。わが家はまだ子どもが小さいですが、一緒に薫製したりします。小さいうちはケガのリスクもありますが、良い道具できちんと使い方を覚えればリスクは減りますよね。

小野: そうなんです。わが家でも、娘も私も自分の包丁を持っています。まあ、開発過程で試験的に使用したものが多いのですが(苦笑)

■販路は広げない。その理由は

飯田: グローバルというブランドは世界で知られているのに、販路はすごく限定していますよね。それはなぜですか。料理道具の世界では、認知度が高くなったら販路を広げるのが一般的なのに。

小野: それは一度沈没しかけたからです。これはいい包丁だから、新しいから売れると思ってやっていましたが、良さを理解されないまま売れても長くは使っていただけない。扱う店も売り上げが下がったら使ってくれません。だったら、きちんと分かっていただける店で、説明して売っていただける店だけに卸したい。そうすることで、エンドユーザーにも伝わり、長く支持してもらえる。それが結果的に企業として長く生きていけるからです。

飯田: 包丁業界は、素材が限られていることもあり、価格の急降下が激しいですよね。ブランドの寿命がすごく短い。料理道具の中でも包丁はそれが顕著なんです。だからブランドの価値をしっかり保持しているのはまれなことだと思います。さらに、グローバルは全体的にリーズナブルですね。ブランドとして知られている包丁だと高額なものがけっこうあるのに。

小野: 包丁は使ってもらわないと意味がないので、小遣いをちょっとためて購入できる金額にしています。また、イストの和包丁は、工程が難しく、一般的には高額になる、左利き用も同額にしています。

飯田: それはありがたいですよね。

小野: イストシリーズはこれで完成だとは思いません。スタートラインに立ったところです。職人も若返りが進んで技術が引き継がれていますが、さらに鍛えている最中です。今の職人が熟練工になったときにもっと面白いことができるんじゃないかと思っています。お客様の参加型としてイストシリーズをもっとブラッシュアップして必要としているモノにしていきたいんです。

飯田: それはぜひ参加したいです。売り上げを重視しないというか、結果的にそうなればいいと考える、その勇気がすごいと思います。今日は興味深いお話をありがとうございました。

(ライター 広瀬敬代)

[日経トレンディネット 2018年11月27日付の記事を再構成]

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