アート&レビュー

エンタウオッチング

『カメ止め』を超えろ 映画ヒットを生む口コミの法則

2018/12/14

2018年の映画界の大きなトピックは『カメラを止めるな!』の大ヒットだろう。低予算映画が、映画ファンの間で話題になり、あれよあれよという間に大ヒットした。改めて注目されたのは“口コミ”の力。インターネット上の口コミサイトのデータ分析から、ヒットと口コミの関係を探った。

『カメラを止めるな!』口コミで大ヒット公開中 (C)ENBUゼミナール
『カメラを止めるな!』(ブル-レイ&DVD発売中/バップ)

『カメラを止めるな!』は6月23日の公開時、わずか2館でのスタートだったが、予想を超える動員を記録して館数が拡大。11月頭に興行収入が30億円を突破した。このヒットに貢献したのが“口コミ”の力だ。同作が認知される過程への影響は非常に大きかったと評価されている。

この『カメラを止めるな!』によく似た口コミヒットとして注目を集めている作品がある。9月22日に公開され、12月に入っても上映が続くタイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』である。

天才女子高校生を主人公に集団カンニングを描いた同映画は、公開スタート時の館数わずか1館。だが、公開初日3日間は1日4回、計12回の上映全てが満席完売となる人気で、10月下旬には公開館数は全国100館を超えるまでに拡大した。

『バッド・ジーニアス』 女子高生リンは、金持ちの同級生から「試験中に回答を教えれば対価を払う」と持ちかけられる(公開中/ザジフィルムズ、マクザム)

『カメラを止めるな!』と『バッド・ジーニアス』への関心はいかに広がったのか。国内最大級の映画&ドラマレビューサービス「Filmarks」(フィルマークス)のデータを基に分析する。同サービスでは、「観たい作品(Clip!)」と「観た作品(Mark!)」を登録する機能がある。その1日ごとの登録数の推移を、公開日を0日としてまとめてみた(表)。

一般的にはClip!も、Mark!も登録数は公開週をピークに徐々に減る。興収80億円を突破した今夏最大の洋画ヒット作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』も同様の経緯を示している。

「作品が面白いと情報を得た際、後で忘れずに観るためにClip!登録するユーザーが多い」とFilmarksを運営する、つみき(東京・目黒)の鈴木貴幸社長は話す。大型作品は数カ月前から宣伝が行われていて、『ジュラシック・ワールド』は公開2週間前から毎日200~300のClip!登録があった。公開週は増えたが、徐々に減少している。

一方、『カメラを止めるな!』のClip!登録数は公開前日までは20~40程度。情報を積極的に収集する映画ファンが登録していたと推測される。その映画ファンが公開日に殺到、劇場が満席になったとのニュースが流れると、Clip!登録は400近くに急増。評判が広がり、以降、登録数は300程度をキープした。

ブレイクのポイントとなったのは7月25日。「8月頭より全国公開される」とのニュースが出ると、Clip!登録は2000を突破した。関心は持っていても、観られないと諦めていた人が一気に動いたと推測できる。

『バッド・ジーニアス』は一時『カメラを止めるな!』を超える動きを見せた。公開前のClip!登録は2桁台で推移していたが、公開直前の9月18日、情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)で「タイ版『カメラを止めるな!』だ」と紹介されたことで登録数は600を突破。

この日を境に、登録数は3桁を長い期間にわたってキープするようになった。『カメラを止めるな!』的な爆発的ヒットには至らなくても、Clip!登録数から見る限り、予想外のヒットに育っていることは明らかだ。

こうしたデータ分析は、映画のヒットに、口コミが大きな力を占めていることをわかりやすく示す例といえるだろう。

(日経エンタテインメント!12月号より再構成 文/羽田健治)

[日本経済新聞夕刊2018年12月8日付]

アート&レビュー 新着記事

ALL CHANNEL