動く花? キモおもしろいハバチ幼虫の集団自衛術
驚くほど息が合っている――動画に映るペルーのハバチの幼虫のことだ。ハバチは幼虫の間、すき間なく積み重なり、移動するのも、自分たちを捕食しようとする敵を追い払うのもいっしょ、まさに一心同体だ。この珍しい様子を、ぜひ映像でご覧いただきたい。
一般に、ハバチの幼虫はイモムシのように軟らかく、攻撃する術ももたない。だから、クモや鳥に簡単に食べられてしまう。そこで、彼らが編み出したサバイバル術が、大勢で束になることだ。幼虫たちは、危険が近づくと、一斉にぴくぴく動きながら体を起こす。
「スパルタ軍の密集隊形を思わせます」と話すのは、ナショナル ジオグラフィック協会が支援する昆虫学者のアーロン・ポメランツ氏だ。同氏がこの動画を撮影した。ポメランツ氏は、アマゾンの熱帯雨林に囲まれた街、ペルーのタンボパタで氏は数年前から調査を行っているが、ハバチの幼虫の不思議な振る舞いを見たのは初めてだった。
遠くから見ると、幼虫の一団は木の幹にある1輪の花のように見える。しかし、観察しようと近づくと、くねくねと動き出すのだ。ポメランツ氏は学者としてこの発見を記録せずにはいられず、イモムシのような小さな幼虫たちの様子を映像に収めた。
ポメランツ氏が幼虫の集団に手を近づけると、幼虫たちは動きを止めて固まり、やがて上に向かって一斉に体を曲げたかと思うと、ぱたんと下に落ちたという。ポメランツ氏はナショナル ジオグラフィックの取材に「ハバチの幼虫たちが一番びっくりしていたのは、私が集団の上で息をしたときと、木の幹に手を置いたときでした」とメールで答えている。
「ウェーブのようなこの反応とヘッドバンギングはおそらく、鳥などの襲ってきそうな動物に対して、1匹の大きな生物のように見せるための方法なのでしょう。こうした捕食者は、1匹ずつならハバチなど簡単に捕まえてしまいますから」とポメランツ氏は説明している。
集団行動がハバチの生存確率をどう高めているのか、科学者たちは研究を重ねている。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2017年9月20日付記事を再構成]
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