横川竟氏は、和食や中華のファミレスとしては異例の店内調理に挑戦した

すかいらーくもセットメニューという売り方をしてきましたが、それがお客様のためなのか、客単価を上げる手段なのか、もう一度見直したほうがいい。栄養を考えると、これとこれを合わせて召し上がってください、というのならよいのですが。

――和食とか中華というと、どうしても料理人の腕と言いたがるところがあります。これをどのようにして克服してこられたのでしょうか。

「バーミヤン」でいえば、鍋の技術を残したことですね。ギョーザやラーメンの麺、スープはCKで作りますが、焼いたり、揚げたり、いためたりといった加熱工程は店舗でやる。洋食よりも中華では現場段階での調理が多く、3割くらいをやっていました。そのため、ひたすら現場の調理技術を磨いてきました。

――ファミレス業態の店というと、店舗段階の調理を極力削減し、CKから入った食材を再加熱するだけというイメージがあるのですが、当時の「バーミヤン」の厨房では、中華鍋に火が入って、炎が上がるという光景があったのですか。

ありました。火事になったこともあります。また、中華では鍋を振るので、料理人がけんしょう炎になることを防ぐため、5人前を作る鍋は置きませんでした。1人前、2人前、3人前の鍋を組み合わせることで、人数分の料理を出せるようにしたのです。現場で加工すると、熱くて香りや食感が良いのです。温めるのとは違う。いためる、焼くという作業は残さなくてはいけない。味はお客様の方がよく知っていますから、手を抜けば客数は落ちます。今の「バーミヤン」で鍋を振っているかは知りません(笑)。厨房には入れませんからね。

――「藍屋」では刺し身を引くのも店舗でやっていたのですか。料理人の育成も大変だったのでは。

そうです。例えばアジのたたきは、生きたアジを各店に配送し、注文が出たときに水槽からすくって調理する。しかも、水槽に入れて3日以内に使い切る。それ以上日が経っては、魚が身痩せしますからね。料理人は自社で育てたのですが、これが大変でした。だから「藍屋」の店舗展開は時間がかかったのです。

――食材の買い付け担当としても、相当動き回られましたね。

1973年に、デンマークにチーズの買い付けに行った時なども、商社は一切使いませんでした。自分で、ご夫婦と娘さんの3人でやっているチーズ生産者を訪ね、「こういうチーズが欲しい」というと、向こうの親父さんが「それなら熟成期間は3カ月のものが良いな」などと教えてくれる。こんな形で各地の生産者や加工所からいろいろなものを買い付けてくるのですが、店舗数が300店になると、コンテナ1本が埋まる。これをCKに運び込んで、賞味期限内にちょうど使い切る量なのです。商社などが介在しないので、コストも抑えられ、その分をお客様に安く提供することで還元できる。

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