中国アニメ、話題作を連発 本気で日本進出のワケ
2016年ごろから、中国企業製作や中国のスタジオ制作のテレビアニメが日本で相次ぎ放送されるようになった。先陣を切るハオライナーズの代表で、自身も数々の作品で監督を務める李豪凌(リ・ハオリン)氏に最新事情を聞いた。

日本で見られる中国発アニメが増えている。17年にはシリーズ化もされた『銀の墓守り』や日本のコミックス原作で上海に本拠地を置くアニメ制作スタジオ、ハオライナーズの『セントールの悩み』などが放送された。
今年もハオライナーズのオリジナル『TO BE HERO』の2期『TO BE HEROINE』など、様々な作品が放送された。
テレビにとどまらない。今年5月には中国版「ニコニコ動画」と呼ばれる動画共有サイト「ビリビリ動画」が、東京・中央区に制作スタジオを立ち上げ、年間3本のペースで配信アニメを制作すると発表。
8月には、ハオライナーズと新海誠監督が所属するコミックス・ウェーブ・フィルム(CWF)が共同制作した『詩季織々』が劇場公開された。
こうした流れは16年ごろから顕著になった。ハオライナーズがTOKYO MXの土曜午後9時に放送枠を持ち、自社作品を毎クール放送。日本のアニメファンの間で知られるようになったのが始まりだ。

『詩季織々』の総監督で、日本に制作スタジオを開設したハオライナーズの李氏は、その目的を「人材育成と、日本の成熟したアニメ文化への参入(融合)」と語る。「日本にスタジオをつくったことで日本のビジネスの複雑さや現場の人材不足など厳しい制作環境も知りました」
「中国では宣伝や権利の販売はスピーディーですが、パッケージやグッズなどメディアミックスは後手でした。今後はこうしたビジネス全体の展開にも取り組んでいきたい」(李氏、以下同)
作品の内容では、中国の伝統文化を下敷きにした「霊剣山」などより、主人公がヒーローとなるSFものの『TO BE HERO』(以上16年)のように日本アニメにもありそうな作品のほうがウケがいい。
また、『Spiritpact』のようにイケメン男性2人が主人公の作品には女性のコアファンが付くなど、日本市場の傾向も把握してきた。

「チームで手掛けるテレビシリーズはスタジオの収益として重要。一方で、新海誠監督や宮崎駿監督が手がけるような作家性重視の映画はぜひやりたい。両者を両立させながら、世界的なヒット作を作るのが目標」
「中国では自国の創作アニメに対するニーズが高まっています。日本にスタジオを持つ会社はまだ少数ですが、中国国内のアニメ会社も増え、面白い作品や企画が続々と制作されています。20年以降は、そうしたアジアのアニメ作品と世界中の観客が出合うようになるのではないでしょうか」
(「日経エンタテインメント!」10月号の記事を再構成 文/波多野絵理 写真/辺見真也)
[日経MJ2018年11月2日付]
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