津田大介 スマホ連動の大型スピーカーを使ってみた
ジャーナリストの津田大介氏が気になるモノやサービスに迫る連載「MONOサーチ」。ここでは、これまで何度かスピーカーを取り上げてきた(記事「重低音で斬る Bluetoothスピーカー5機種」「風呂専用や旅のお供 津田大介の無線スピーカー活用法」参照)。今回、津田氏が興味を持ったスピーカーは、これまでで最大。屋外イベントなどで用いられるPAスピーカーだった。業務用というイメージが強いが、最新モデルはスマートフォン(スマホ)と組み合わせることで、いろいろな可能性を感じさせる製品に仕上がっていた。
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ミュージシャンやイベント会場の運営者などが、屋外のイベントやセミナールームなどで試用するPA(Public Addresess)スピーカー。多くの人にとって身近とはいえない機材だろう。
そんなPAスピーカーに僕が興味を持ったのは、イベントやセミナーなどに招かれて行う講演がきっかけだった。会場ではマイクを使うが、PAスピーカーが古いと、声が会場の隅まで届きにくかったり、僕自身が話しにくかったりする。製品を見直してくれたらうれしいけれど、そこにお金を費やすのは難しい場合も多いんだろうなと考えつつ、WEBでどんな製品があるか見ていたのだ。そうすると面白そうな製品がいくつか見つかった。
今回試用したのはDJ-Techの「FPX-G12BTE」とBoseの「S1 Pro」の2製品。どちらも充電式バッテリーを内蔵し、Bluetoothでスマホからも利用できる。実際に使用してみると、個人や会社で持っていても楽しいのではないかと感じさせる製品だった。
屋外にも気軽に持ち出せる
そもそも、WEBで最初に「FPX-G12BTE」を見たときに、気になったのが、その外観だった。本体の上部にはハンドル、底面には車輪がついている。まるでキャリーバッグのようなシルエットだ。本体重量は14.5kgと手で持ち上げるにはやや重いが、これならいろいろなところへ持って行ける。プライベートでも利用できるのではないかと考えたのだ。
一方の「S1 Pro」も、ハンドルや車輪こそ付いていないが、本体重量は7.1kgと軽く、片手で簡単に持ち上げられる。240mm(横)×高さ332mm(高さ)×282mm(奥行き)とコンパクトなので、部屋の隅に置いても邪魔にならない。
どちらも充電式バッテリーも内蔵しており、FPX-G12BTEは最長約8時間、S1 Proは、最長約11時間駆動するという。マイクをつないでイベントや路上ライブを開催するといった本来の用途にとどまらず、キャンプやガーデンパーティーのような集まりで音楽を流したりみんなを集めての催しに利用することもできるわけだ。
FPX-G12BTE は、80W出力のアンプや2ウエイスピーカーユニットを搭載しており、実際スマホから音楽を流してみると、なかなかいい音質で再生できた。もちろん音量も問題ない。
S1 Proも音響機器を製造してきたBoseの製品だけあって音質が高い。60W出力のアンプやフルレンジスピーカーを搭載しており、マイクを使ってもノイズが少なく快適に話せた。
両機種ともマイクを使えるので、会社の研修やイベントでも役立つだろう。最初に話したような古いシステムを使い続けている企業もチェックしてみるといいのではないか。
スマホとの連携で個人利用がより手軽に
PAスピーカーは、野外ステージやライブハウスでの演奏など、音楽関係者を中心に使われてきたが、FPX-G12BTEやS1 Proは、個人で持つのも面白いかもしれないとも感じた。実際、それぞれのメーカーに確認したところ、これまでの主な販売チャネルはミュージシャンをはじめとした音楽関係者だったのに対して、FPX-G12BTEやS1 Proは、より幅広いユーザーを想定しているという。
その鍵となるのが、両機に搭載されているBluetoothだろう。オーディオ機器やケーブルがなくても、持っているスマホから手軽に音楽を流せるようになり、難しい操作も不要なので、ホームパーティーなど、個人利用での使い勝手が向上したというわけだ。
バッテリーを内蔵し取り回しがよいのも、用途を広げる上では重要なポイントだと思う。外にも手軽に持ち出せるので、バーベキューやキャンプなどアウトドア好きな人は、これがあれば楽しみが広がるだろう。
ユーザーから寄せられている活用事例を見ると、以前の機種に比べてプライベートの場面で活用している人は確実に増えているという。フリーのダンスインストラクターが、スタジオレッスン用に購入するケースもあったそうだ。スマホと接続することで、製品の可能性が大きく広がると実感した事例だった。
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。「ポリタス」編集長。1973年東京都生まれ。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。主な著書に「ウェブで政治を動かす!」(朝日新書)、「動員の革命」(中公新書ラクレ)、「情報の呼吸法」(朝日出版社)、「Twitter社会論」(洋泉社新書)、「未来型サバイバル音楽論」(中公新書ラクレ)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。
(編集協力 藤原龍矢=アバンギャルド、写真 渡辺慎一郎=スタジオキャスパー)
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