DAOKO・あいみょん… 「検索時代」に躍進する歌姫
スマートフォンの普及により、10年前と比べて音楽を聴く手段が多様化している今、女性ソロシンガーで躍進しているのがDAOKO、あいみょん、足立佳奈の3人だ。いずれも「検索時代」に対応して、発見されるためのフックを数多く仕掛けて注目度を高めている。
日本レコード協会調べによる「主な音楽聴取手段トップ15」を見ると、音楽の楽しみ方の多くがスマートフォンで利用できるもので、トップはYouTubeだ。CDショップで新曲のリリースを知ってもらえた時代とは違って、現在は新旧のばく大な楽曲が混在するYouTubeの中から、わざわざ検索して発見してもらう必要がある。
そんな状況の中で、女性ソロアーティストで昨年大きく躍進したのがラップシンガーのDAOKOだ。17年8月にリリースした『打上花火』は「2017 Billboard JAPAN総合ランキング」で3位に入り、邦楽では星野源の『恋』に次ぐ。このランキングは音楽セールスに加え、ダウンロード数、ストリーミング回数、YouTubeの再生回数なども反映する、まさにスマートフォン時代の複合ランキングだ。
彼女はこの「検索時代」に対応するため、様々なメディアで積極的に展開をしてきた。SNSでは、中学生の頃に「ニコニコ動画」にラップ曲を上げていたことが15年のデビューのきっかけとなり、16年にはライブの模様を「LINE LIVE」で生配信して若い世代にアピールをしている。
ファン層の違う歌手とコラボ
そして作年のヒット曲『打上花火』は、アニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(17年8月公開)の主題歌となったタイアップ曲であり、しかも人気急上昇中の男性シンガーソングライター米津玄師とのコラボレーション楽曲だった。その後も、主に30~40代が支持する岡村靖幸や、米アーティストのBECK、若手人気バンドのD.A.N.といった異なるファン層を持つミュージシャンとのコラボ楽曲を立て続けにリリース。昨年末にはハイエンドなファッション誌『装苑』の表紙を飾り、女性支持もしっかりと獲得している。
新世代の歌姫候補に名乗りを上げる1人が、16年にデビューしたシンガーソングライターのあいみょん。彼女はきゃりーぱみゅぱみゅと同じワーナーのレーベルunBORDE(アンボルデ)に所属する。レーベルヘッドを務める鈴木竜馬氏は、「楽曲の良さを伝えるため、ラジオというトラディショナルなプロモーションも大切にしながら絵的な興味も持ってもらえるように、本人のビジュアルやジャケット写真などのアートワークなどをしっかりと作り込んできた」という。
3rdシングル『君はロックを聴かない』(17年8月発売)は、ラジオ局のパワープレーを計42局で獲得し、全国の音楽好きに届けることに成功。さらに有名スタイリストと組むことで、デビュー間もない頃から『装苑』や『GINZA』といったハイファッション誌などでフォトジェニックな姿を披露してきた。この春からはメガネブランド「Zoff」でモデルも務める。
■15秒ソングを20曲以上投稿
また、30万人のフォロワーを持つツイッターを自分のホームにしながら、女優業も展開するのが18歳のシンガーソングライター足立佳奈。14年に「LINE×SONY MUSICオーディション」で芸能界入りした彼女は、17年2月にツイッターに、「キムチと言うと口角が上がって笑顔になれる」という内容の15秒ソング『笑顔の作り方~キムチ~』を投稿。スマートフォン時代に合った短尺の動画は若者の間で話題となり、フォロワー数が急増した。
制作を担当するソニーミュージックの山中幸夫氏は、「当時は1日に1万人近くフォロワー数が伸びるほどの反響がありました。その後も、家族や友達などをテーマにした15秒ソングを20曲以上投稿し、ファンを増やし続けています」と語る。そして彼女はSNSだけにとどまらず、昨年テレビドラマで女優デビューを果たすなど、顔と名前を広く知ってもらうための活動も欠かさず行っている。
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2018年6月号の記事を再構成]
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