トランクルーム要らず かさばる服をスマホで管理
サマリー社長 山本憲資氏
衣類や本、家財道具の保管のためトランクルームやコンテナボックスを月ごとに借りるのが一般的な収納サービスだ。この常識にIT(情報技術)で挑戦、トランクルームいらずのスマホで管理する収納サービス「サマリーポケット」を運営するのがサマリー(東京・渋谷)。山本憲資社長に事業の狙いと特徴を聞いた。
――サービスの内容を教えてください
「もともとは『Sumally(サマリー)』というサービスを展開していました。それを発展させた形で2015年9月、国内最大級のトランクルームサービスを展開する寺田倉庫(東京・品川)さんと一緒にサマリーポケットというモノを預かるサービスをリリースしました」
「サマリーポケットでは、アプリでボックスを取り寄せ、主に服や本など使っていないモノや、収納に困っているモノを詰めて、集荷依頼すると着払いで倉庫に送られます。これを初期費用0円、1箱月額250円から預からせていただくサービスです。預けていただいたものはアプリで管理でき、スタンダードプラン(1箱月額300円~、取り出し送料800円~)では箱ごとだけでなく、一点ずつ必要なものだけを選んで取り出していただくこともできます」
■リアルな「モノ」情報を蓄積できる強み
――サービスを始めた理由は。
「寺田倉庫さんとお話をさせていただく中で、モノをモノとして預かる『保管』というものを考えたときに、所有と物欲のデータだけではなくリアルに持っているモノを蓄積していくことで、できることはもっと広がるのではないかと思いました。データとして預かる、すなわち何を預かっているのかが分かれば、保管ということ自体も進化させることができる」
「例えば、このアイテムを持っている人はこれが好きですよねとレコメンドができるとか、モノは保管したまま所有権だけ他の人に譲渡したりするというのは、ただスペースを貸しているだけではできないこと。おのおのが何を預かっているのかが見えて分かると、そういったことができるようになって面白いのではないかと思ったのも、サービスを始めたひとつのきっかけですね」
――トランクルームなどではなく、ボックス単位でモノを預かっている理由は。
「寺田倉庫さんがもともと箱で、しかも中身を開けて保管するというノウハウを持っていたということも大きいです。箱で管理すると保管効率がすごく良い。例えば、大きい自転車を並べるのと、箱を並べるのであれば、同じ体積でも箱の方が保管効率は良く、結果的にユーザーさんに安く利用していただけます」
――服や本などの保管は温度や湿度管理が大変だと思うが、具体的にどうしているのか。
「温度・湿度のコントロールを24時間365日(1日3回のチェック)実施し、カビの発生しにくい保管環境を常に保持しています。また、入出庫の際の急激な気温の変化を避けるため、季節により温度・湿度も変更しています」
■服の保管、1人平均30着 クリーニング依頼サービスも
――トランクルームとの差異化部分はなにか。
「都内でトランクルームを借りようとすると、月額約1万円かかりますが、サマリーポケットだと一番安くて250円から使えます。また、トランクルームだと自分で持ち運んで預けなければいけないので、車を持っていない人が使うのはハードルが高い。その点、サマリーポケットは自宅まで集荷に来てくれて、取り出すときも自宅まで届けてくれるので、ハードルも低いかと思います」
「ほかに『コンシェルジュストレージ』と呼んでいるサービスもあります。スタンダードプランでは箱に入っているアイテム1点ごとの取り出し(取り出し送料800円~)ができます。ハンガーにかけるとか、クリーニングを依頼できたりするのも特徴です。要らなくなったモノは、ヤフオク!にて完全おまかせの匿名で売ることもできます」
――収納量も気になるが、例えばひとつの箱にはどれくらい服が入るか。
「サマリーポケットではプランとボックスを選べるようになっているのですが、例えばスタンダードプランのアパレルボックスだと1箱平均15着ほど収納可能です。服を預けている利用者にアンケートを実施したところ、平均30着預けているという結果が出ています。主に衣替え利用や、サイズアウトした子供服を思い出やお下がり待ちでお預けいただいている方が多いようですね」
――ユーザーからの実際の反応はどうか。
「ユーザー調査を行っていますが、おおむね利用者の満足度はすごく高いです。現在アプリのダウンロード数は約10万。1人当たりの平均月額利用額は約1,500円で、4~5箱くらい預けている状況。やはり、ボックスでモノを預けるというのに慣れていない方が多いので最初のハードルは高いのですが、1回使うと、『あ、これはあそこに預ければいいや』と思っていただけることが多いですね」
■クローゼットから服があふれる人へのソリューションとして認知目指す
――事業を拡大する上での課題はなにか。
「やはり、知名度をどう上げていくかです。先程も言いましたが、ボックスでモノを預けるというのはまだ一般的ではない。それこそ今、渋谷の駅で100人に聞いて、2~3人知ってくれていたら御の字だと思います。知ってすぐ使ってくれるわけでもないと思うので、引っ越しや部屋を片付けたいときに、『サマリーポケットってあったな』と思ってもらえるように認知してもらうのがまだまだ大事ですね」
――今後、目指すのは。
「まずは収納に困ったモノを箱で預けるというオプションが普通になるようにしたいです。よく社内では『まだ市場が確立していない状況で衣服の消臭スプレーを売り始めるのに近いよね』という話をしています。一昔前までは臭いが気になる洋服や家具に消臭スプレーをかけるという習慣がなかったところに、スプレーで除菌できるでしょ?とひたすら啓発をやり続けて、一般化させた」
「まずはサービスの固有名詞を売るのも大事だけれど、困ったモノはスマホで、箱で預けようという、そのカテゴリのそもそもの認知を拡大させないといけない。クローゼットから服があふれて嫌だなと思っている人たちに、それは改善したほうがいいよねと心から共感してもらい、それに対してこういうソリューションがあると教える。そうやってカテゴリの認知を広げることを中長期目線でやりたいと思っています」
1981年生まれ。一橋大学卒、電通に入社。その後、コンデナストジャパンにて雑誌『GQ JAPAN』の編集者を務める。10年に独立し、サマリー設立。
《会社概要》
社名:サマリー 設立:2010年4月1日 所在地:東京都渋谷区 資本金:約4.7億円 事業内容:「サマリー」、「サマリーポケット」の企画・運営・開発
文:FACY編集部 岩崎佑哉(https://facy.jp/) 写真:長井太一
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