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ヨーヨー・マ 新盤バッハ「無伴奏チェロ組曲」を語る

2018/10/27

世界最高の評価を受ける米国人チェロ奏者ヨーヨー・マ氏(63)が、生涯3度目となるJ・S・バッハ「無伴奏チェロ組曲(全6作品)」のCDを出した。チェロの「聖典」といわれる曲集に込めた思いは何か。「困難な時代」に生きる人々を助ける音楽の力について巨匠が語り尽くす。

予想外の事態がインタビューを始めてすぐに起きた。ヨーヨー・マ氏が目の前でいきなり愛用のチェロ、1712年製ストラディヴァリウス「ダヴィドフ」を弾き始めたのだ。バッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」から1曲目の有名な「プレリュード」。「4歳のときに初めて父に教えてもらったのがこの作品だった。何事にも興味津々な年ごろで、新しい音楽との出合いは深く印象に残った」。そう言いながら、指揮者で作曲家だった父・馬孝駿氏から受けた手ほどきを実演してくれた。

生涯3度目の「無伴奏チェロ組曲」全曲録音

ヨーヨー・マ氏にとってバッハの「無伴奏チェロ組曲」は幼少期から人生の心強い味方となってきた特別の作品だ。たった一本のチェロで奏でられるこの曲集の深い精神性は比類ない。彼の最初のレコーディングは20代後半の1982年。2度目が40歳を目前にした94年から40代前半の97年まで。そして62歳の2017年12月、3度目のレコーディングを果たし、8月に出たCDが「バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)シックス・エヴォリューションズ」(発売元:ソニー・ミュージックレーベルズ)だ。

――バッハの「無伴奏チェロ組曲」とどう出合ったか。

「4歳のときからこの組曲とともに生きてきた。最初に父から『第1番』の『プレリュード』を習った。1日目に父から教わったのは最初の8つの音符だ。これを2回繰り返して1小節になる。左手で使うのは指1本、どんな子供にもできる。2日目は2本の指を使い、初日と似たようなパターンの繰り返しだ。3日目は3本の指と増えていき、毎日1小節ずつ弾けるようになった。『プレリュード』には42小節あるので、42日目には1曲弾けるようになっていた」

「人は繰り返し読む気に入った本や、小さい頃からの思い出の詰まった家など、生涯を共にするものに深い愛着を覚えるものだが、私の場合は音楽作品だった。バッハの『無伴奏チェロ組曲』との対話は私個人の成長と相応している。この作品はどんなときも私を癒やし、苦しいときには慰め、安心させてくれた。時を経ても作品は変わることはないが、年を取るにつれ私自身は変わり、作品との関係も変わった。そこでもう一度レコーディングしてみたい気がした。なぜなら60歳を過ぎると人生観が変わり、世の中が違ったふうにみえる。私の人生観だけでなく、私がこの音楽から何を感じ、学んだかを表現する機会となったように思う」

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