「鯉幟」「命なりけり」など、映画から生まれた酒が実際に商品になって発売されている。「私のお気に入りは、鯉幟。フルーティーなので、日本酒が苦手な女性も飲みやすいと思います」

主演映画で、伝統的な日本酒造りを体験

18年10月20日に、初めて主演した映画『恋のしずく』が全国公開される。演じたのは、農業大学で醸造を学びながらワインソムリエをめざしている橘詩織。詩織が意に沿わず、日本三大酒どころの広島県・西条の酒蔵へ実習に行かされたことから、日本酒の魅力に目覚めていく物語だ。

「主演と聞いたときは、うれしい半面、心配になりました。『私が主演じゃ、誰も見ないですよ。大丈夫ですか?』って聞いたら、『地域活性化にもなる映画だから、大丈夫、大丈夫』って言われて。『あ、じゃあ…』みたいな感じでしたね。(笑)

詩織とは、日本酒が苦手なのに広島に行くことになって、『ええ~?』となってるところが、自分と似てるなと思いました(笑)。私も、もともと日本酒はあんまり得意ではない、というか、ほぼほぼ飲んだことがないくらいだったんですよ。だから広島ではまず酒蔵を見学したりして、詩織と同じように自分自身もお酒のことを学んでいきました。

みんな普通にお酒を飲んでますけど、実際に造るのは大変なんですよ。杜氏(とうじ)の方はシーズンになるとものすごい早起きをして、寒い中で冷たい水と向きあったり、暑い部屋にお米を並べて発酵させたりしている。いかに手間ひまかけてお酒が造られているのか、一滴にどれだけの愛情がこもっているのか、この映画を通して知ることができました。

印象に残っているのは、やっぱり酒造りのシーンです。私は発酵させる場面で、大きな米袋を運ぶように言われたんですけど、十何キロ分かな、本当にお米が入ってたんですよ。『マジですか。空じゃないんですか?』みたいな(笑)。大変なこともありましたけど、新鮮で楽しかったし、それこそ、知らない世界を知る楽しさがありました」

蔵元役の大杉漣さんとお酒を飲むシーン。「大杉漣さんは、大先輩じゃないですか。だから何か壁があるのかなと思ったんですけど、とてもフラットな方で、みんなに同じように接してくれました」(C)2018「恋のしずく」製作委員会

共演者との出会いも大きかった。実習先の蔵元役で、大杉漣さんが出演。撮影後に逝去したため、大杉さんの遺作の一つとなった。

「初めての共演だったんですけど、すごかったです。テストから緊張感が走るくらいの熱量でやってくださって、お芝居がめちゃくちゃリアル。『ここは、俺はこうはしないと思う』とわかりやすく説明して、監督と話し合ったりもしていました。私は、監督に言われたことをのみ込んじゃうタイプなので、そうやって意見を言うことも作品を創る上では大事なんだなと思いましたね。

大杉さんのオールアップ(撮影終了)の日、スタッフ、キャストみんなでバーベキューをしたんですよ。そのときに大杉さんが『川栄さんとは、また共演すると思うから』と言ってくださったのが、すごくうれしかったです。完成した作品を大杉さんが見られなかったことが、すごく残念。素晴らしい役者さんと共演できて、本当にありがたい経験になりました」

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