ボルボV60がモデルチェンジ 日本型サイズに進化
ボルボ・カー・ジャパンは、ミッドサイズステーションワゴン「V60」をフルモデルチェンジし、9月25日に発売した。日本で扱いやすいサイズを実現するとともに安全性能を強化。走行距離無制限の新車5年保証を用意するなど、ユーザーサポートを厚くすることで、他社からの乗り換えも促す。2種類のPHEV(プラグインハイブリッド)を設定する一方でクリーンディーゼルは国内では投入しなかった。
V60は、日本で大ヒットを記録したステーションワゴン「ボルボ850エステート」の流れをくむ、主力モデルの一つ。「ボルボといえばステーションワゴン」のイメージを日本に定着させたボルボの大定番シリーズだ。新型は2代目となる。
3つの対向車衝突対策を採用
ボディーサイズは、全長4760×全幅1850×全高1435mm。前モデルと比べ全長を125mm拡大しているが、全幅は逆に15mm縮小。これは、日本の生活環境を考慮したボルボ・カー・ジャパンの「車幅を1850mm以内に収めてほしい」、というリクエストが聞き入れられたものだという。もちろん、世界共通で新世代ボルボに採用されているモダンでシックなスタイルはそのままだが、車幅がデザインに与える影響は大きい。つまり日本のために生まれ変わったボルボともいえるわけだ。
インテリアも新世代ボルボデザインの上品なもので、レザーシートやウッドパネルなど天然素材も積極的に採用。ダッシュボードの中央には、タッチスクリーンのインフォテインメントシステムを備える。前席のシートは、上級モデル「90シリーズ」に使用される大きいサイズのものを採用している。後席も、足元空間を広げた。
ボルボの強みである安全運転支援機能「インテリセーフ」は16種類以上の機能を備え、他モデル同様に標準装備している。従来の「インテリセーフ」には、対向車との事故を防ぐための機能が2つあった。一つめは、「対向車線衝突回避支援機能」。対向車の接近時に自車の対向車線へのはみ出しを検知すると、ステアリングを自動操作して走行車線に戻す支援をする。
2つめが「右折時対向車検知機能」。交差点右折時に対向車との衝突の危険を検知すると、自動ブレーキがかかる。
新モデルではさらに、「対向車対応機能」が追加された。対向車が自車と同一車線を進行してきた場合にその接近を検知し、衝突を回避できないと判断された場合、被害を最小限に抑えるため、自動的にブレーキを作動させる。
パワートレインはガソリンとガソリン+PHEV
パワートレインは、2.0Lのガソリンエンジンと、2.0Lガソリンエンジン+モーターのPHEVを設定した。トランスミッションは、全車8速AT。ガソリン車モデルの「T5」が最もスタンダードな仕様で、前輪駆動のみとなる。4気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力254ps、最大トルク350Nmを発揮する。
2種類あるPHEVは全車が四輪駆動で、納車は19年春の予定。ツインチャージャーエンジン(4気筒ターボ+スーパーチャージャー)にモーターを組み合わせる。最上級仕様「T8 TWIN ENGINE AWD」の性能は、エンジン最高出力318psに加え、モーター最高出力87psとなっている。
もうひとつの「T6 TWIN ENGINE AWD」は、エンジン最高出力253ps+モーター最高出力87psで、より効率重視の仕様だ。
PHEVのラインアップを強化する一方で、本国仕様に設定されているクリーンディーゼルは導入しない。この理由について、ボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長は、欧州での乗用ディーゼル車の販売縮小を例に挙げ、「現在は日本で人気の高いクリーンディーゼルのニーズにも、将来的には変化が訪れる」と分析している。
これはすぐにクリーンディーゼル車のニーズがなくなるということではなく、新型V60のユーザーが将来の売却時に、クリーンディーゼル車を選んで売却価格が不利にならないための配慮でもあるという。ただ、ボルボ全体でクリーンディーゼルの設定を無くすわけではなく、大型SUVなどディーゼルエンジンのメリットが享受できるものは、今後も継続していく方針だ。
日本適応サイズで他社から取り込みねらう
新世代ステーションワゴンでは、V90が存在するが、こちらはサイズが大きく、価格も高い。やはり、ボルボワゴンのメインが、このV60であることは今後も変わらない。また車幅を日本での走行に適したサイズにしたことで、他社のステーションワゴンユーザーの積極的な取り込みもねらう。その戦略の一環として、輸入車初となる走行距離無制限の新車5年保証の導入も決めた。
17年と18年に相次いで発売した「XC60」と「XC40」の販売が好調で、すでに納車は半年待ちという。このため、V60は輸入台数の確保にも力を入れており、まさに絶対失敗できない状況といえる。まずは既存ユーザーの買い替えをどれだけ積極的に進められるかが、大きな目標となりそうだ。
(文・写真 大音安弘)
[日経トレンディネット 2018年10月1日付の記事を再構成]
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