J・キャメロン、日本のマンガを実写化 『アリータ』
『タイタニック』『アバター』の大ヒットを生んだジェームズ・キャメロンの9年ぶりの新作『アリータ:バトル・エンジェル』が12月に公開される。20年近く企画を温めてきた日本のSFマンガ『銃夢(ガンム)』の実写映画化だ。キャメロンが製作・脚本を務め、『スパイキッズ』の鬼才ロバート・ロドリゲスが監督した。その魅力をプロデューサーのジョン・ランドーに聞いた。
木城ゆきと原作のマンガ『銃夢』は、人体をサイボーグ化することが一般化した未来が舞台。クズ鉄の街でサイボーグ専門医師を営むイド・ダイスケが、がれきの中からサイボーグの少女アリータの上半身を掘り出す。記憶をなくしていたが、やがて自らの戦闘能力に気づき、巨大な陰謀に巻き込まれていく。
1990~95年まで「ビジネスジャンプ」(集英社)で連載された原作に、なぜキャメロンが引かれたのか。ランドーは、「アリータのキャラクターにある」と明かす。「キャメロンはこのマンガを知った当時、13歳の娘がいました。ティーンエージャーがどういう苦しみを経て自分を発見するか、その過程に着目していたのです」
『銃夢』が出版された90年代は『攻殻機動隊』『AKIRA』など日本のマンガやアニメにハリウッドが注目し始めた時期だった。「彼は2作とも大好きですが、ハリウッド映画に翻案するのが難しいと思っていました。グローバルに成功する普遍的な映画を作りたかった。『銃夢』はキャラクターや世界観に普遍的なものがあると感じたそうです」
キャメロンが初めて原作を読んだのが99年。満足のいく脚本を仕上げるのに5~6年かかった。『アバター』を先に製作し、2020年公開予定の続編も自身が監督することにしたため、『アリータ』の監督をロドリゲスに任せた。「ロドリゲスは我々が大事にしていた3点を理解していました。映画はアリータの(成長の)旅で、イドとの関係は父と娘のようなもの。そして(彼女が出会う人間の)ヒューゴとのロマンスです。長い脚本を彼が編集し、アクションもストーリーの一部として進行を担うよう変更しました」
キャメロンならではの最先端CGも売り物。サイボーグのアリータを作成するにあたり、人の動きをデータ化してCGキャラクターを作り出すパフォーマンスキャプチャーの最新技術を用いた。画質もSDからHDにバージョンアップし、「顔のアップ演技がより繊細に、ニュアンスが効いたものになった」。
撮影はキャメロンの名を高めた3Dカメラを使い、「観客はまるで街にいるかのような薄汚れた臨場感や先の見えない奥行きが感じられる」。
キャメロンは19年冬に新『ターミネーター』、20年冬には『アバター2』の公開を予定。その前哨戦といえる『アリータ』でキャメロンが再び映画界をにぎわせそうだ。
(「日経エンタテインメント!」9月号の記事を再構成 文/相良智弘)
[日経MJ2018年9月21日付]
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