秋こそこだわるVゾーン 「お約束」と立体感忘れずに
出勤前、ワードローブの前で「今日は何を着て行こうか」と思案に暮れる人は少なくないはず。そんなビジネスマンに、押さえるべきツボを伝授する「プロが教えるBizコーデ」。今回のテーマは「Vゾーン」、胸元のオシャレだ。一段締まった男の装い方についてスタイリスト、小林新さんに聞いた。
クールビズが終われば、再びネクタイの出番だ。マフラーやコートの季節までの間、周囲の目が行くのはもっぱら「Vゾーン」。上着、ワイシャツとネクタイが形作る空間がきりっと垢(あか)抜けていれば、「がぜん締まった男に見える。だからこそVゾーンにはこだわりたい」と小林さんは力説する。
カギは「Vゾーンのお約束」を忘れずにいることと、「立体感」を意識することの2つだという。
■「すべてバラバラ」か「1対2」
お約束とは何か。それは上着、ワイシャツ、ネクタイの合わせ方の流儀である。3アイテムを大別すると、上着は無地と柄物(ストライプなど)、ワイシャツは無地とそれ以外、ネクタイはソリッド(単色=無地)とドット(水玉や小紋)、レジメンタル(ストライプ柄)に分類できる。3アイテムを「すべてをバラバラ」ないし「1対2」の組み合わせにするのを忘れないことである。
例えば写真1は「すべてバラバラ」のパターン。上着はストライプ、ワイシャツは無地、ネクタイはドットの組み合わせだ。見た目にもすっきりしたVゾーンで、相手に不快感を与える心配がない。

ストライプの上着に、同じく主張が強いレジメンタルのネクタイだと「直線同士の組み合わせとなり、うるさい。それに相手の目もチカチカする」。主張が強いものは1アイテムにとどめるのが「1対2」の場合の基本だ。
写真2はネクタイをドットから小紋柄に変えたもの。模様が大きくなっただけで、随分とインパクトが違うのがお分かりだろう。さらにベストを身につければ、胸元が多層になり、より立体感が生まれる。それなりの年齢や立場の方なら「貫禄」にもつながる。

■Vゾーンの勢力バランスを整える
ウインドーペンチェック(格子柄)の上着に無地のワイシャツ、ネクタイという「1対2」の組み合わせが写真3。上着のチェックの主張が強いので、ワイシャツとネクタイは無地でVゾーン内の勢力バランスを整え、紺の濃淡のグラデーションも映える。

単にワイシャツといってもデザインはいろいろだ。写真1は襟(カラー)がスタンダードタイプだが、写真3は丸みを帯びたラウンドタイプ。角張っているか、そうでないかで、見た目の印象は変わる。ラウンドカラーはソフトに見え、営業職の方などにおすすめだ。
■立体感がアクセントに
一方、写真4は襟と袖口部分の色が他と違う「クレリック」で、襟は「タブカラー」と呼ばれるタイプ。生地がストライプと主張が強いため、お約束に従い上着とネクタイは無地をセレクト。タブカラーは襟元でネクタイが隆起し、立体感を生み、Vゾーンのアクセントとしてもいい。

写真5は写真4のネクタイを替え、「すべてバラバラ」のお約束に従った装い。これだと「ビジネスよりも結婚式の2次会など華やかなシーンにふさわしい装いになる」。仮にお手持ちのスーツが2着しかなくても、「上着とワイシャツ、ネクタイの組み合わせ次第で何通りもの着こなしが可能で、Vゾーンのオシャレが楽しめることをぜひ忘れないで」と小林さんはいう。

■すべてのVが美しく
胸元のVゾーンだが、実は様々なVから成っているのにお気づきだろうか。ベストを重ね着すれば、そこにもVができ、シャツの襟とネクタイを締めた部分にも逆のVがある。襟元と上着のラペルによるVもある。
「すべてのVが美しくあるのが理想」。そのためにもワイシャツの襟は上着の下にきちんとおさめる。ネクタイの締め方も重要だ。ディンプル(くぼみ)はさりげないこなれ感の演出にもなるが、「ディンプルが作れていない方が意外に多い」と小林さんは指摘する。原因はネクタイの締め方にある。「大剣(ネクタイの太い方)をきゅっと引っ張り、絞るように締める」のがコツ。遊びを作ってはダメという。
「きついから」とワイシャツの第一ボタンを外したままネクタイをする人がいるが、それだと襟元が締まらない。タイバーもVゾーンの立体感やアクセントを生むための小物として活用できる。秋のこの時期、Vゾーンにこだわり、オシャレを楽しみながら、男の価値も上げていきたい。
※価格は税込み。

大学卒業後、2006年に独立。雑誌や音楽、広告分野などを中心に活動。服にとどまらず、その周辺にある美術などもスタイリングの一環と考え、独自の視点を持つスタイリストとして定評がある。
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