男性の健康左右するテストステロン 仕事力にも影響

日経Gooday

社会貢献については、健康な女性たちにテストステロンとプラセボ(偽薬)のどちらかを投与した実験がある。テストステロンを投与された女性たちは、プラセボ群に比べて寄付の金額が増えた[注3]。つまり、自分が損をしても社会に貢献しようという気持ちが強くなったといえる。

また、公正さを求めるフェアプレー精神が強くなり、ウソをつかなくなる。91人の男性にテストステロンとプラセボのどちらかを投与した後、サイコロを振ってもらい、出た目を申告させた。出たサイコロの目は自己申告で、目が大きいほど多くの賞金がもらえる。6が出る確率は17%(6分の1)のはずだが、プラセボ群では62%になっていた。一方、テストステロンを投与された人たちでは35%に減っていた[注4]

他人や社会を思う公共心とウソをつかない公正さ。どちらも組織を率いるリーダーに求められる資質だろう。

「テストステロン値が高い人は“社会の中の自分”を意識するので、多くの人が価値を認めるブランドやステータスを好む傾向がある。また、不安を感じにくい“鈍感力”も強くなります」(堀江さん)

テストステロンの作用は女性でも同じで、優れたリーダーシップを発揮する女性はテストステロン値が高いことが多い。男女を問わず、生まれつきのテストステロンの多さは手の指の長さに表れる。テストステロン値が高い人は人差し指よりも薬指が長い傾向がある[注5]。占いのように聞こえるかもしれないが、しっかりエビデンス(科学的根拠)がある話だ。

命にもかかわる“男性更年期”

個人差は大きいが、一般に年を取るとテストステロンの分泌は減っていく。また、ストレスも強く影響する。ストレスが視床下部から脳下垂体に作用し、精巣でテストステロンがつくられる量が減るのだ。帝京大学で行われた調査では、60代以上よりも40~50代男性のテストステロン値が低い傾向があった[注6]。仕事のストレスが原因ではないかと考えられている。

唾液中のテストステロンを測定したところ、40~50代が60代以上より低いという結果になった。ストレスの影響があると見られている。The Journal of Men's Health & Gender 2007;4(2):149-155

最近よく耳にする“男性更年期”とは、加齢やストレスによってテストステロンが著しく減ってしまった状態。医学的にはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれる立派な病気だ。

気持ちが沈む、やる気が出ない、よく眠れない、頭が痛い、疲れやすいなど、テストステロンが減ることで心身に多くの不調が表れる。

テストステロンが低い人は内臓脂肪が増える傾向がある[注7]ので、生活習慣病にもなりやすくなる。「実際、テストステロンを補充すると、脂肪が減って筋肉が増えます」と堀江さん。国民健康・栄養調査によると、今世紀に入ってから中高年男性の肥満が増えているが、ストレスによって全体にテストステロンが減っているのかもしれない。

[注3] Nature. 2012;485(7399):E4-5

[注4] PLos One. 2012;7(10):e46774

[注5] BJU Int. 2012;109(2):266-71

[注6] The Journal of Men's Health & Gender 2007;4(2):149-155

[注7] Metabolism. 1990;39(9):897-901

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