東京・池袋から西武池袋線の急行と各駅停車を乗り継いで約20分。清瀬駅に降り立つとホームから怪しげな看板が見える。看板にはロダンの彫刻を思わせる哲学者らしき男性のイラストに「考えた人すごいわ」の文字。何の店かは書かれていない。
まだ蒸し暑さが残る9月上旬の朝9時半、店の前にはすでに50~60人ほどの行列ができていた。
実はこちらのお店、今年の6月末にオープンしたばかりの高級食パン専門店である。「考えた人すごいわ」は店のキャッチフレーズではなく、れっきとした店の名前。朝10時の開店時に60個、その後1時間ごとに20個焼きあがる「生食パン」を求めて、地元はもとより県外からもパンマニアが訪れる。

「生食パン」とは、焼かずにバターやジャムをつけずに食べてもおいしい食パンのこと。最近、素材や製法にこだわりぬいた高級生食パンがブームで、その専門店が増えているのだ。
中でもこの店はそのインパクトのある店名がツイッターなどでアッという間に拡散され、オープン初日から「行列のできる店」に。客足はその後も引きを切らない。
同店を経営しているのは、関東・東北地方に飲食店とベーカリー13店舗を経営するオーネスティグループ(埼玉県所沢市)。

「弊社はショッピングセンターを中心に和食レストランを展開してきましたが、以前よりベーカリー業態にも進出したいと考えていました。パンの中でも食パンはコメと同じで、毎日食べても飽きないおいしさがあります。白いご飯のように、何もつけずに食べておいしいものを作りたい、毎日食べるものだから余計なものを入れずに作りたい。それには、いろいろなパンに手を広げて中途半端になるのではなく、1つに集中して自信のあるものを提供したい。そんなことから食パンの専門店という形になりました」