週末レシピ ワインに合う!脂のったカツオのタルタル
今が旬の「戻りガツオ」は別名「トロガツオ」とも言います。
春に黒潮に乗って北上する時期に漁獲されるカツオは「初ガツオ」と言い、身が赤々として、ギュッとしまり、あっさりとした味わいです。それに比べて、秋に獲れる「戻りガツオ」は、イワシなどのエサをたっぷりと食べて丸々と太って大きくなってから、水温の低下とともに南下し、戻って来るので脂がのり、濃厚な味わいです。
今回は濃厚な味わいの「戻りガツオ」だからこそできるつまみレシピを紹介します。
カツオと言えば、切っただけの刺し身でいただいたり、火であぶったり、伝統的なわら焼きにした「たたき」をしょうゆやポン酢しょうゆ、ニンニクスライス、おろしショウガと合わせて味わうのが一般的ですが、今回はスーパーで買ってきたいつものカツオに、簡単なひと手間をプラスするだけで、ワンランクアップさせた「カツオのタルタル」を紹介します。
脂がのった戻りガツオは今回の料理に最適ですが、春のカツオを使う場合は、オリーブオイルを多めに入れても良いでしょう。赤タマネギやニンニクなどの香味野菜を加えるだけでなく、オリーブオイルも使うので、ビールはもちろん、冷えた白ワインにも合います。また、オオバやスダチも加えるので香り豊かで、この時期ならではの日本酒の冷やおろしとも相性抜群です。
<材料(1皿分/約2人前)>
赤タマネギ 4分の1個 / ニンニク 1片 / カツオ 200g / オリーブオイル 大さじ1 / しょうゆ 大さじ1/2 / 塩 小さじ1/2 / こしょう 適量
<飾り付け材料>
オオバ 5枚 / ミニトマト 2~3個 / スダチ 1個
カツオはサクではなく、刺し身用にすでにスライスされているものを使ってもOK。また香ばしいカツオがお好きな方は、表面がすでにあぶってあるサクを購入して、同じように作ってもいいでしょう。お好みでパクチーを加えてもおいしいです。
基本的には、これらの食材を細かく刻んで、調味料と合わせて混ぜるだけとシンプル。調理時間は約10分。普段はお料理をしないという初心者でも簡単に作れますのでご安心を。
では、さっそく材料を刻むことから始めましょう!
(1)赤タマネギは粗みじん切りにします
今回は辛みが少ない赤タマネギ(別名アーリーレッド)を使うので、切った後に水にさらさなくても大丈夫。普通のタマネギを使う場合は辛みが気になるので、粗みじん切りにした後、水を2~3回変えて十分に水にさらして辛みを取ってから、キッチンペーパーなどでしっかり水気を切ってください。
(2)ニンニクはみじん切りにします
赤タマネギよりもかなり細かいみじん切りにしておくとベター。後で混ぜる時に、全体的に行きわたりやすくなり、味わいにもムラが出ません。
(3)オオバを千切りにします
オオバは軸を取り、真ん中の葉脈のところで縦半分に切ります。それをくるくる巻くようにしたら、端から切って千切りにします。巻いてから切ると、初心者でも比較的美しく切ることができます。切った後に水に一度さらしてから水気を切ると、アクも抜け、シャキッとした千切りオオバになります。
(4)ミニトマトとスダチは縦4等分に切ります
今回ミニトマトは、彩りを良くするためと、脂がのった戻りガツオの箸休め的な存在として使用してますが、お好みでほかの野菜などを添えてもよいでしょう。もし、スダチがなければ、カボスやユズ、ライム、レモンなどお好みのかんきつ類を使っていただいても大丈夫。
食べる時にギュッとしぼることで、風味が爽やかになり、さっぱりとした味わいになります。また、かんきつ類は食べる直前にかけること。かんきつ類をカツオにかけると身がしまり、少し時間が経つと色が変わってしまうのでご注意ください。
ここまで野菜類をカットしました。カツオを切る前に、野菜類を先に切っておくと、まな板が汚れず、いちいち洗わなくていいので効率的です。
(5)カツオを「タルタル」にしていきます
まず、サクのカツオを1センチの厚さに切ります。さらに幅1センチの細切りにします。それをまた1センチに切ると1センチ角のカツオの山ができます。この山を包丁でたたきます。 料理用語でよく「たたく」と言いますが、実際にはビシバシとまな板にたたきつけるわけではなく、「たたく」ように包丁を動かし、食材を細かく刻んでいくことを「たたく」と言います。
戻りガツオは脂がのっていて、包丁やまな板がすべりやすくなるので、ケガをしないように気を付けて「たたいて」下さい。 また、今回はかたまりであるサクを使用しましたが、刺し身用にすでにカットされているカツオを使っても切り方は同じです。
ちなみに「タルタル」とは別名「タルタルステーキ」ともいい、生の肉や魚を細かくたたいてミンチ状にして、香味野菜やオリーブオイルなどと混ぜた料理のこと。昔、モンゴルの遊牧民が馬で移動中に食べ物が不足して、食用ではない、筋の多い馬肉を細かく刻んで調味料とともにくらの下に入れて体重と振動で軟らかくしたものを作っていたのがヨーロッパへ伝わり、現在のような形になったとも言われています。
一方で、韓国にも同様に伝わったこの遊牧民の料理は、コチュジャンやゴマ油を合わせてユッケになったとも言われています。ヨーロッパのタルタルと韓国のユッケは起源が同じ。ともにモンゴルの遊牧民の料理から発展したとは興味深いですね。
さて次は、切った材料を混ぜましょう。
(6)「たたいたカツオ」「粗みじん切りにした赤タマネギ」「みじん切りにしたニンニク」をまずボウルに入れます
今回はシンプルな具材にしましたが、お好みでディルやパクチーなどのハーブや、青ネギなどの香味野菜を粗く刻んだものを入れたり、ショウガのみじん切りや松の実を加えたりしてもおいしくいただけます。
(7)ボウルに調味料を加え、混ぜます
(6)のボウルに、しょうゆ、塩、こしょう、オリーブオイルを加えて、ゴムベラなどで全体的に良く混ぜます。和風の調味料・しょうゆにオリーブオイルを加えることで、洋風のまろやかな味わいに変化します。
(8)皿に盛り付けます
すべての材料がよく混ざり合ったら、「タルタル」を盛り付けます。こんもりと山のように盛り付けるのがポイントです。今回は型代わりになる手のひらサイズの器に一度タルタルをしっかりと詰めてから、それを盛り付け皿にひっくり返すようにのせて、形よく盛り付けてみました。真ん中に水気を切ったオオバをあしらいます。
「タルタル」の周りに、カットしたミニトマトとスダチを彩りよく飾ります。クラッカーや薄く切ったバケットを添えて、「タルタル」をのせて食べてもおいしく頂けます。
カツオのねっとりとした食感とタマネギのサクサク感、オオバの風味が絶妙なハーモニー。よく冷えたシャルドネやリースリング、ミディアムボディーの赤ワインとも合います。日本酒と合わせる方は、お好みでサンショウを少しふっても、味に変化が出ておいしいでしょう。
つまみとしてとてもおいしいですが、少し残しておき、お酒のシメにご飯の上に白ゴマやノリなどと一緒にのせても格別な味わいです。カツオとオリーブオイルの風味が白いご飯にとても合い、オトナのシメご飯に早変わりします。
今が旬の戻りガツオのつまみ、ぜひこの機会にお試しください。では、すてきな週末を。
(GreenCreate 料理研究家 橋本加名子)
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