アルコール依存症の人は、自分が依存症と認めない飲むべきか、飲まざるべきか、それが問題(上)

日経Gooday

私は30代になって自分の飲み方はやばいな、と思い始めたときがありました。例えば、飲みまくった次の日、知らない場所で目を覚ますことが増えるとか。起きたら身に覚えのないケガをしているとか。

葉石:うっ……、たまにありますね。

自分が依存症ではないという証拠を集めようとする

葉石かおり著、浅部伸一監修『酒好き医師が教える最高の飲み方』

小田嶋:そういうことが続くと、自分の飲み方はやばいんじゃないかと思うわけです。でも、そこからさらに飲んでいると「俺は大丈夫だ、アル中じゃない」という自覚に変わるんですよね。不思議なことに。

(一同笑い)

小田嶋:ここまで来ると、症状が確定している状態ですよね。そして、どんどん自分がアルコール依存症ではない、という証拠を集め始めるんです。例えば「先週月曜日は飲まなかった」とか。火曜から日曜までは飲んでいるんですけど、「アル中だったら、毎日飲まずにいられないはずだ。1日飲んでいない俺は、アル中ではない」と考える。でもそれは、単に体調が悪くて飲めなかっただけなんですけど。

葉石:二日酔いがひどくて飲めない、ということですか?

浅部伸一 1990年、東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院、国立がん研究センター、米スクリプス研究所などを経て、2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科勤務。現在アッヴィ合同会社所属。専門は肝臓病学、ウイルス学。

小田嶋:いや、もう二日酔いどころじゃなくて、水も何も飲めない状態になるんです。何を口に入れても吐いてしまう。だから、点滴をうってもらうしかなくなるんです。私は1993年から95年くらいまでは、月に1~2回は点滴うちに病院に行っていましたね。でも、そんな状態でも「飲んでない日があるから大丈夫」って思うんです。

葉石:そこまでいっても、認めたくないんですね……。

小田嶋:もし、かつては「俺、飲みすぎてやばいよね」みたいに笑っていた人が、あるときから「俺はいつでも酒をやめられる」「全然飲みすぎてないから」なんて真面目な顔で言い出したら要注意ですよ。

葉石:それまでと、認識が変わってしまうのはこわいですね。

小田嶋:変なこだわりがでてきたりね。私は依存症だったころ、なぜかサントリーが嫌いだったんですよね。酒の会社のくせに、文化とか芸術に造詣が深いみたいな雰囲気を出しているのがしゃらくさい、と。今、考えると、完全に言いがかりで申し訳ないんですけど。

ただし、考え方や性格が全面的に変わるわけじゃないんですよ。そこが難しい。ちゃんとしているところは、ちゃんとしているんです。当時の私だって、それらしい原稿を書いていたわけですし。

飲んでいないときは、無気力でぱっとしない人間

葉石:完全に人が変わってしまうわけではないんですね。原稿は、酩酊状態で書いていたんですか?

小田嶋:酒は入っているけどまともな状態、というのがあるんですよ。当時は、酒が切れてひどく無気力で憂鬱な状態と、泥酔して使い物にならない状態の二極を、行ったり来たりしていました。その途中の段階は一応まともで、その間に原稿をやっつける。でもまともでいられる時間が、だんだん短くなってしまうんですよね。

ドラマなんかだと、アルコール依存症は酔っ払ってフラフラしているところばかり描かれますよね。でもむしろ、しらふの状態のときにどれだけ使えない人間か、というのが問題だと思います。私は、お酒が2、3日切れているときは、話しかけても、「ああ……別に。うん、もう少し小さな声でしゃべってくれない……(小声)」みたいな反応しかしないやつになっていました。

葉石:今の小田嶋さんからは想像できません。そんなふうになってしまうんですね。

浅部:酒が切れて無気力な状態から、少し飲むと調子が良くなるというのが、まさにアルコール依存症ですよね。つまりアルコールが存在していることが、脳のノーマルな状態になってしまっている、ということなのです。

葉石:そうなると、治療が必要ですよね。

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