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熱中症防ぐなら服は綿よりポリエステル 開口部も重要

熱中症を衣服の工夫で防ぐコツ(上)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

連日の猛暑で、熱中症になる人が後を絶たない。過酷な暑さの中でも、身につける衣服の工夫によって熱中症になるリスクを下げ、少しでも快適に過ごすことはできるのだろうか。衣服と環境、皮膚血流や発汗の関係などについて詳しい神戸女子大学教授・平田耕造さんに聞いたところ、「発汗時には、綿よりポリエステルの服のほうが熱が放散されやすい」「肌着は体に密着したポリエステル製がいい」「体幹部の上下に開口部をつくるのがカギ」といった興味深い話が飛び出した。平田さんの話を2回にわたって紹介する。

いかに体の熱を効率的に放散できるかがカギ!

通常、人間は体内の温度が必要以上に上がると皮膚血流が増え、汗をかいて、それが蒸発するときの気化熱によって熱を外に逃がして体温を下げる。ところが、この体温の上昇と調節のバランスが崩れると、逃がせない熱が体内にたまって熱中症になってしまう。

熱中症の発症には環境や行動などの様々な要因が絡むが、その一つとして、かいた汗が十分に蒸発できない状態になると皮膚から逃げる熱が少なくなり、体内にこもりやすくなることがある。平田さんは、「体温は脳の中枢がコントロールしているため、熱中症を防ぐためには、栄養や睡眠など日ごろの健康的な生活習慣も大切」と前置きしたうえで、衣服については次の3つが柱となると話す。

(1)熱の放散を促進する

(2)体の中に入る熱をできるだけ遮る

(3)圧迫により体液循環(血液循環・発汗量)をコントロールする

前編では「(1)熱の放散を促進する」衣服の工夫をお伝えしよう。

熱を効率的に放散させる5つのコツ

【1】手・腕・足・脚を露出する

手・腕や足の末端部は、体幹に比べて体積に対する表面積の比率が大きいため、構造上、広い面積から熱が逃げやすい。また、手足の末端には「動静脈吻合(Arteriovenous Anastomoses、以下AVA)」(図1)と呼ばれる、体温調節に機能を特化した特別な血管がある(AVA血管の詳細は、「手足の冷え防ぐ6つのコツ カギ握るは『AVA血管』」を参照ください)。

「AVAは体の隅々まで熱を運ぶために、手足の末端に多く存在しています。寒いときは体幹を冷えから守るため収縮して末梢への血流を減らしますが、暑いときは拡張して手足の血流を増やすことで多量の熱を環境へ放散します」(平田さん)

従って、暑いときは手や腕、足先を露出することで効率的に熱が放散される。「サンダルなどで足の指先を出すことには大いに意味があります。長ズボンでも足の指を出せば熱放散効率はとても大きくなります。逆に、足先を靴などで覆うことは熱放散を著しく妨げます。手足の指部は凹凸が大きく表面積が広いため、熱放散効率がとても高いのです」(平田さん)

さらに、「手足の末端でAVAを通過した血流は、心臓に戻るときに皮膚表面に近い静脈を通ることで腕や脚全体から積極的に熱を逃がし、体温調節に貢献しているため、腕や脚も、露出することである程度は熱放散を促進できる」(平田さん)という。そのため、長袖と半袖、あるいは長ズボンと半ズボンとでは熱放散の効率が大きく違ってくる。

【2】体幹部は上下に開口部を作る

暖まった空気は上昇するため、襟元が開いているだけで、皮膚表面の空気がそこから外に抜け出て体幹の温度も多少下がる(希釈換気という)。

「TPOにもよりますが、襟元を開けるだけでなく、シャツの裾をズボンなどから出して下から入った空気が上に通り抜けるようにすると、換気が著しく有効になるでしょう。これを煙突効果といいます」(平田さん)

上下に開口部をつくると、動くたびに空気の流れが起こり(ポンピング効果)、換気も促進されるという。

【3】汗をかくようなときは、綿よりポリエステル

衣服の素材によって、体温上昇の具合は異なる。平田さんらは綿100%のTシャツとポリエステル100%のTシャツを用いて、温熱環境下での衣服の表面温度と、皮膚血流量を調べる実験を行った[注1]。その結果、発汗が始まった頃から特に吸湿性の高い綿のほうが大きく衣服の表面温度が上がり、皮膚血流も増加した(図2)。

「ポリエステルは構造上、繊維内部に水分を保持しにくいため乾きやすいのですが、綿素材は水分が繊維そのものに染み込み、保たれた水分が温まって収着熱と呼ばれる熱が上乗せされます。汗をあまりかかない状況では綿のTシャツも吸湿性が高く快適ですが、汗をかくと吸湿性により暑く不快に感じるのです。ただし、同じ素材でも汗のかき方によって収着熱の影響は変わります。環境条件や個人差によっても感じ方は違ってきます」(平田さん)

平田さんによれば、汗をかいているときは、綿のような、吸湿性が高くて、さらに繊維内部に水が入り込んで膨れ、中に水分を保持しやすく、環境へ蒸発されにくい素材より、ポリエステルのような、吸水性(繊維と繊維の隙間に毛細管現象[注2]で水を吸い上げる)と速乾性(繊維内部に水分を保持しにくいため乾きやすい)を兼ね備えた素材のほうが、熱放散が促進されやすいという。

[注1]Tanaka K, et al. Heat of sorption induced by sweating affects thermoregulatory responses during heat load. European Journal of Applied Physiology. 2001;84:69-77.

[注2]毛細管現象とは、重力に関係なく、液体がその表面張力と付着力によって繊維と繊維の隙間を上昇・下降する現象

【4】密着したポリエステル製のインナー+ゆったりしたシャツ(上着)

平田さんらは、綿100%とポリエステル100%のインナーを用いて、それぞれ皮膚との間にゆとりがあるものと密着したものとで、発汗に伴う深部体温の変化を見る実験を行った[注3]

その結果、ポリエステルでゆとりのあるときに体温は0.41℃上昇したのに対して、密着したポリエステルでは0.30℃の上昇にとどまった。綿はポリエステルよりも体温が高くなり、ゆとりタイプでは0.49℃、密着タイプでは0.60℃の上昇となった(図3)。

「ゆとりがあるタイプは皮膚の汗をインナーの外の環境へ移動させるまでに一度蒸発させなければならないので時間がかかり、体温が上がりやすくなります。密着しているほうが汗を皮膚から繊維と繊維の隙間に素早く吸収して広げるので、汗が水蒸気となるときに熱が外へ早く逃げることになります」(平田さん)

つまり、発汗を伴うような暑さのときは、体に密着したポリエステルのインナーを着るのがよいということだ。さらに、その上に着るシャツや上着は、空気が入りやすいゆったりしたものにすれば、裾から襟元へ空気が抜ける「煙突効果」も期待でき、体温上昇が抑えられやすいという。

意外に思う人もいるかもしれないが、シャツ1枚より、密着したポリエステルのインナーを着て、その上にシャツ(ゆったりしたもの)を着たほうが快適に過ごせる、と平田さんは言う。インナーを着ていないと、汗をかいてシャツがべったりと肌に張り付く不快さを避けて通れないうえ、流れる無駄な汗(無効発汗)が増えて体温調節の効率が悪くなる。一方、先述した通り、体に密着したポリエステル製のインナーを着ることで、皮膚から出る汗を流れ落ちることなく繊維と繊維の隙間に吸って生地一面に広げ、素早く蒸発させられる。早くから熱放散を促進するので、体温がそれほど上がらず、少ない汗で済むのだ。

【5】機能性インナー(吸水速乾・接触冷感)を利用する

ポリエステルのインナーの中でも、近年は「吸水速乾」「接触冷感」などの機能を持つ機能性インナーが多く出回っており、体温上昇を抑えるのに役立つ。各社で繊維の組み合わせや製法を研究して独自性のある新製品を生み出している。自分の好みやライフスタイルに合った機能性インナーを入手して賢く利用したい。

一般的に、「吸水速乾」(吸汗速乾ともいう)の機能を持つ素材は、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維で作られており、極細繊維や異形断面繊維等を利用して、狭い隙間で生じる毛細管現象によって素早く水分が吸収・拡散されるようにしている。吸水しても綿のように繊維自体に入り込んで膨潤することはないので、速乾性を発揮できる。

「接触冷感」は、繊維が皮膚に触れたときに冷たく感じる感覚のことで、熱伝導率が高い(皮膚から繊維への熱の移動速度が速い)ほど、接触冷感機能が優れているといえる。皮膚と繊維の温度差が大きいほど、冷たく感じられるが、同じ温度になれば熱の移動は生じなくなるので冷たく感じなくなる。

「最近では、メントールを入れることによって、より冷感を感じられるようにした素材もあります。皮膚の温度センサーがメントールを感知することによって、温度は変わらなくても脳は冷たいと感じるのですが、それだけで体温上昇を防ぐのに有効とはいえません」(平田さん)

汗は早いうちから蒸発させるのが正解

過酷な暑さの中で長時間の労働を強いられる建設作業などの現場では、背中に取り付けたファンから風を送り込んで人工的に汗が気化するスピードを上げ、強制換気を行う「ファン付き作業服」も熱中症対策として取り入れられているという。日常でもうちわであおぐなどして風に当たることで、積極的に汗を気化させることを心がけたい。

平田さんによれば、人は汗が蒸発するときの気化熱によって体熱を外に逃がしており、従って、蒸発せず流れ落ちてしまうほどの汗は脱水状態を引き起こすだけで体温調節の効果はなく、無駄な汗(無効発汗)といえる。「かいた汗は早いうちから密着インナーに吸い上げさせてどんどん蒸発させることを目指すべき」と覚えておこう。そのための適切な策をとれば、少しの汗で熱を効率的に放散させながら、つまり体温上昇を抑えながら、暑さの中でも元気に生活することができそうだ。

後編では、「熱を遮る」「圧迫により血液循環・発汗量をコントロール」の2つの工夫についてお伝えする。

[注3]平田耕造ほか.被服による皮膚圧迫が体温調節反応に及ぼす影響.デサントスポーツ科学. 2003;24:3-14.

(ライター 塚越小枝子、図版作成 増田真一)

平田耕造さん
 神戸女子大学家政学部教授。医学博士。東京学芸大学大学院修了後、金沢大学医学部生理学第一講座助手、講師を経て1989年4月から神戸女子大学家政学部助教授、93年から教授、2013年4月から副学長。専門は環境生理学。気象条件の急変や室温差に対し、衣服はポータブルな快適環境をつくるもの。衣服内や皮膚の温湿度・皮膚血流や発汗等を指標として、特に皮膚の動静脈吻合(AVA)血流に注目して研究に取り組む。

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