ライディングスタイルは、RTとF3ではF3の方が前傾姿勢となる違いはあるものの、オートバイというより、スノーモービルにまたがったような感じを受けた。このあたりは、やはりスノーモービルから派生したということもあるだろう。

慎重に走り出して最初に感じたのは、「思ったよりも乗りやすい」。筆者は2輪免許を持たず、原付きすらほとんど乗ったことがないのだが、ハンドルやアクセル、ブレーキ操作に戸惑うこともなかった。

減速時は、アクセルを戻し車速が落ちると自動的にシフトダウンしてくれるのでエンジンブレーキもかかる。ブレーキも日ごろから使い慣れたフット式ブレーキだし、3輪なので、停車時に足をついて車体を支える必要もない。オートバイではカーブや右左折時に進行方向に対して体を傾け重心移動をする必要があるが、カンナム・スパイダーでは普通の自転車と同じようにハンドルを切って曲がる。

それでいて遮るものがなく、体で受ける風の心地よさと開放感はオートバイ同様といえるだろう。

カンナム・スパイダー。最初に感じたのは「思ったよりも乗りやすい」

入門モデルも発売予定

2013年の日本導入以来、現在まで年間約300台を安定して売り上げているというカンナム・スパイダー。オートバイに比べ高い安全性から、ユーザーは体力面の不安からバイクを降りたシニア層が全体の6割を占める。残り4割は二輪免許を持たないユーザーで、こちらは30代や40代の比較的年齢の若い層もいるという。ただ、平均300万円という価格、保管場所も軽自動車程度の広さと防犯性の高い場所が必要になることから、ユーザーは金銭的余裕がある人たちが中心になる。BRPによるとこの傾向は世界的にも変わらないそうだ。

その対策か、若い人を含めより多くのユーザーを取り込むべく、今秋にも100万円台の価格を抑えたモデルが発表されるらしい(編集部注 実際に発売されたのは2019年3月。記事「普通免許で乗れる三輪オートバイに入門機 価格も身近」参照)。一気に購入のハードルが下がるのは間違いない。まずは試乗やレンタルなどで乗り心地を体験してみてほしい。

大音安弘
 1980年生まれ、埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材している。自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。