自律神経刺激し脂肪も燃やす レモンショウガ炭酸水
自律神経を上手に操れば、ダイエットは難しくない。カギとなるのは、交感神経のやる気を呼び覚ます「刺激」だ。「炭酸水」「レモン」「ショウガ」の刺激で、自律神経の働きを高め、体脂肪を燃えやすくして、食欲を抑え太りにくくする。そんな「レモンショウガ炭酸水」によるダイエット法を紹介する。
○脂肪燃焼スイッチを入れる
○食欲を抑え、食べ過ぎを防ぐ
○冷えを改善する
○体内時計を整える
○血糖値を改善しやすくする
食べる前に飲むだけで「やせる体」に
暑さが増すこれからの季節、シュワッと爽快感を得られる炭酸水は水分補給にうってつけだ。そんな炭酸水をはじめ、レモンの香りやショウガの辛みなどの「刺激」は「交感神経の活動を高め、食欲を抑えたり、脂肪を燃焼するなどやせやすいモードに切り替えるスイッチになる」と京都大学名誉教授の森谷敏夫さんは話す。交感神経は満腹中枢に作用し、食欲を増進させるホルモンである「グレリン」の分泌を抑制し、食欲を抑える「レプチン」の分泌を促すからだ。
また、「交感神経の働きが高まると、脂肪の燃焼作用も期待できる」と森谷さん。実際、レモンの香り成分やショウガの辛味成分では、交感神経活動の増加と脂肪の燃焼促進作用が確認されている。森谷さんの研究では、同じ柑橘類のグレープフルーツと比較しても、レモン果汁が圧倒的に高レベルで交感神経を活性化したという。
一方、炭酸水で交感神経活動を高める役割を担うのは、炭酸による物理的な刺激と、冷たさという温度刺激の2つ。つまり、炭酸濃度が高く、冷たいほど効果は高いといえる。「炭酸水やレモン、ショウガをダイエットに生かすなら、食事の前にとるのがいい。脂肪を燃やすだけでなく、無駄食いを防ぐ効果も期待できる」(森谷さん)。もちろん、市販の砂糖入りジンジャーエールなどではなく、炭酸水にレモン果汁、おろしショウガを加えた「レモンショウガ炭酸水」がお薦めだ。
(材料 1杯分)
・炭酸水 250ml
・レモン果汁 1個分(大さじ2)
・おろしショウガ 小さじ1
(作り方)
冷えた炭酸水にレモン果汁、おろしショウガを入れてよく混ぜる。炭酸は強いほうがよりいい。
レモンショウガ炭酸水で自律神経のパワーもアップ
交感神経の働きを高める食品をとることは、自律神経全体の機能を高めることにもつながるようだ。
交感神経・副交感神経は、どちらかの働きが高まると、もう一方が落ち着くシーソーのような関係にあるが、「加齢や運動不足で自律神経そのもののパワーが低下すると、それぞれの反応が鈍くなり、ホルモン分泌や血流の低下などにつながる。体内時計の乱れもここに原因があるのでは」と森谷さんは語る。
そんな自律神経の衰えに活を入れるのが、交感神経への刺激だ。交感神経の反応が良くなると、副交感神経への切り替えもスムーズになるという。
「自律神経のパワーを維持する最も有効な刺激は、心拍数や血圧などが少々変動するような運動だが、炭酸水やレモンなどの食材をとることは、自律神経を鍛える手っ取り早い方法といえる」と森谷さん。
レモンショウガ炭酸水が脂肪を燃やすのは戦いに備えるため?
レモンやショウガ、炭酸水は、口の中や鼻腔、消化管にある知覚神経を刺激することで、交感神経の活動を高め、体脂肪の分解・燃焼を促し、食欲を抑制する。これは、交感神経活動が高まることで、体が「戦う準備が必要」と勘違いするから。戦いに備えて食欲を忘れ、脂肪を燃やしてエネルギーを作ると考えられている。
ほかにもこんな成分が脂肪を燃やす
交感神経を刺激して活性化させる食材は、炭酸やレモン以外にもたくさんある。
例えば、ショウガ同様に辛味成分を持つ唐辛子やコショウ、シナモンなどの香りが強いスパイス、ニンニクやタマネギなどの香味野菜にも同様の交感神経刺激作用があり、これらの食材をミックスして作るカレーやキムチは、自律神経を整える食事メニューとして森谷さんもお薦め。「体が熱くなるのは、交感神経の活動が高まっている証拠」(森谷さん)という。
一方、「コーヒーのカフェインには、交感神経・副交感神経ともに働きが低下しているときは促進し、高ぶっているときには鎮めるという面白い効果がある」(森谷さん)。ダイエット目的ならブラックで。「1日3~4杯程度なら、カフェインの過剰摂取の心配もない」。
交感神経を刺激して活性化させる食材
【シナモン】独特の甘い香りがポイントココアやラテの風味付けに
脂肪の燃焼を促すのは、清涼感と甘み、辛みが複雑に絡み合った香り成分のシンナムアルデヒド。知覚神経に存在する低温を感知する受容体に作用することで、交感神経の働きを高めて脂肪燃焼を促す。カプサイシンのような体熱の放散作用がなく、唐辛子ほど汗はかかない。
【黒コショウ】血糖値対策でも注目?!実はコーヒーにも合う
脂肪燃焼のスイッチを入れるのはコショウに含まれる辛味成分、ピペリン。コショウのなかでも黒コショウに多い成分で、カプサイシン同様の熱を感じる受容体に作用する。また、運動と同様に、血中グルコースの筋肉内へのとり込みを高める働きが動物試験で確認されている。
【唐辛子】脂肪を燃やす辛い食品の代表格
辛味成分のカプサイシンが、口の中や消化管の知覚神経にある、温熱を感じる受容体を刺激し、交感神経の働きを高める。研究では、体脂肪燃焼の指標となる熱産生増加と、熱の放散が確認されている。とりすぎは、血管を収縮して血圧を上昇させたり、心拍数の増加につながることもある。
【魚油】「いい油」はダイエットの味方になる
脂肪の燃焼を促す働きを持つのは、魚油に含まれる脂肪酸のEPA、DHA。イワシやサンマなどの青背の魚に多く含まれ、体内の炎症を抑えたり、認知機能を維持する働きなどで注目されることが多いが、カプサイシン同様に温熱受容体に作用し、脂肪燃焼を促すことが確認されている。
【ワサビ・カラシ】ツーンとくる辛みが効くおろしたてがベスト
交感神経に働きかけるのは、辛味成分のアリルイソチオシアネート。揮発性の高い成分で、鼻に抜けるようなツーンとした辛味と催涙作用が特徴。シナモンと同様に、低温を感知する受容体に作用し、交感神経の活動を高めることで、脂肪の燃焼に伴う熱産生を高める働きが確認されている。
【ニンニク・タマネギ】ビタミンB1と協力して脂肪を燃やす
脂肪燃焼を促すのはにおい成分のアリシン。カプサイシンと同様に、熱を感じる受容体を介して交感神経の働きを高める。アリシンが体内でビタミンB1と結びついてできるアリチアミンには、脂肪の分解・燃焼のシグナルとなる神経伝達物質ノルアドレナリンの分泌を高める働きも。
【緑茶】体脂肪を燃やすトクホ飲料でおなじみ
交感神経の働きを担うのは、脂肪の燃焼を促すトクホ飲料でもおなじみのエピガロカテキンガレート。お茶の苦みのもととなる成分で、カプサイシンやオレウロペイン同様のメカニズムで脂肪を燃やすスイッチを入れる。茶葉にはカフェインも含まれるため、Wの作用が期待できる。
【コーヒー】効きの主役はカフェイン香りにはリラックス作用も
コーヒーに含まれるカフェインには、交感神経に働きかけるだけでなく、直接脂肪細胞に働きかけて脂肪の分解・燃焼を促す働きがある。また、副交感神経への切り替えを高める働きもあるとされるが、メカニズムは不明。愛飲者には、香りがリラックス効果をもたらすことも。
【エキストラバージンオリーブオイル】苦みの強いものを選ぶべし!
交感神経に働きかけるのは、オリーブに含まれるポリフェノールの一種、オレウロペイン。苦みのある成分で、カプサイシンなどの辛味成分と同じメカニズムで交感神経に作用する。最も多いのはオリーブの葉の部分だが、オリーブオイルなら比較的エクストラバージンオイルに多い。
京都大学名誉教授。運動医科学研究所。60歳代にしてジョギング・筋トレ・空手で鍛え上げた自身のボディを披露した著書『京大の筋肉』(ディジタルアーカイブズ)が話題に。寝たきり高齢者の筋肉増進法、筋肉と認知症との関係の研究に取り組むなど、筋肉と栄養・シェイプアップ法に詳しい。
(ライター 北市みち、取材・文 堀田恵美=日経ヘルス編集部、スタイリング 渡辺ゆき、図版 三弓素青、写真 小林キユウ)
[日経ヘルス 2018年7月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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