福岡の市場の路地裏 野菜料理との一期一会
和食 蓮
新鮮な食材が並ぶ博多の台所、柳橋連合市場。そのにぎわいを横目に路地裏を進むと、大きなレンコンが描かれたのれんが目に入る。肉・魚介文化が発達した福岡で、野菜にとことんこだわった和食づくりを続ける。
同市場で八百屋を営む先代が創業。独自の仕入れルートを生かし、全国から新鮮で珍しい野菜を取りそろえる。野菜との一期一会で生まれるコースメニューは定期的に替わり、季節ごとに遠方から足を運ぶファンも多い。
民家を改装した店内はどこか懐かしく、控えめなジャズのBGMも料理と会話を引き立てる。店名を冠した「蓮コース」(5900円)は旬の野菜を使った9品。「こちら、金美にんじんと豆苗の白あえです」。1品目から聞き慣れない名前だが、鮮やかなレモンイエローのニンジンに特有のくせはなく、柔らかな肉質と甘みにほっと心が安らぐ。
丁寧に裏ごししたジャガイモで鶏団子を包んだまんじゅうは女性に人気の一品。口に入れた瞬間にふわっと溶けるジャガイモとジューシーな鶏肉の食感の違いが絶妙。
焼いたタイと合わせた加賀太きゅうりのソテー、砂丘らっきょうの天ぷら、よさこいハニーのサラダ――。皿の数だけ出合いがある。「この年になって初めて食べるものがあるなんて」。そう年配客が驚くことが「一番うれしいですね」と店主の隈部祐二さんは笑う。
(鳥越 ゆかり)
〈れん〉福岡市中央区春吉1の10の1 電話092・737・2155
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