『ボス・ベイビー』で弾み 洋画アニメからヒット続々

洋画アニメーションのヒットが続きそうだ。勢いを付けたのはドリームワークス・アニメーション(DWA)が今春公開した『ボス・ベイビー』のヒット。ピクサー・アニメーション・スタジオなど他スタジオも2019年にかけ話題作を用意している今、ヒットの理由と今後の公開予定を探った。

『ボス・ベイビー』 少年ティムの元にやってきたボス・ベイビーは「赤ちゃんの人気を子犬から奪い返す」ことが任務だった(8月8日ブルーレイ+DVDセット発売/3990円・税別/NBCユニバーサル・エンターテイメント) (c)2018 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved. (c)2018 Universal Studios. All Rights Reserved.

3月から公開された洋画アニメ『リメンバー・ミー』『ボス・ベイビー』がヒットした。6月中旬までに『ボス・ベイビー』の興行収入は34億3000万円に達した。『リメンバー・ミー』はピクサー・アニメーション・スタジオ、『ボス・ベイビー』はDWA作品であり、特に『ボス・ベイビー』はDWA史上、日本歴代興収1位となった。

米国では長らく人気を誇るDWAだが、日本で全国規模の劇場公開となるのは6年ぶり。ディズニーとピクサー作品を除いて洋画アニメ市場が厳しく、配給会社では劇場公開を見送ってきた経緯がある。だが、15年にイルミネーション・エンターテインメントの『ミニオンズ』が52億1000万円の大ヒット。17年はディズニー『モアナと伝説の海』、イルミネーション『怪盗グルーのミニオン大脱走』『SING/シング』が年間興収トップ10入りするなど、洋画アニメは興行の大きな柱に育ってきた。

DWAがNBCユニバーサルに買収されたのを機に、日本では東宝東和が配給を担当した。同社はすでにイルミネーション作品を配給しており、ノウハウを生かして『ボス・ベイビー』のヒットを狙った。

イルミネーション作品の宣伝を手掛けてきた東宝東和の松尾亘氏は、洋画アニメ作品のヒットに欠かせない要素として「キャラクター、吹替版、コンセプト」を挙げた。同氏によれば、ボス・ベイビーはキャラ立ちし、ビジュアルもかわいらしく日本人受けしやすい。吹替版の俳優はパブリシティー露出につながる点はもちろん、キャラクターも重要だという。「ボス・ベイビーの声を演じたムロツヨシさんは『若者に受けているおっさん』という点がボス・ベイビーと共通していた。『赤ちゃんなのにおっさん』と一言で言えるコンセプトも伝わりやすかった」

宣伝面では、東宝東和配給のイルミネーション作品『怪盗グルーのミニオン大脱走』上映時に予告編を流し、登録者数1000万人を超えるユニバーサル・ピクチャーズのLINE公式アカウントでスタンプを無料配布した。

アニメ作品は邦画も強いが、ファミリー向け、大人向けなどターゲットが細分化している。一方、洋画アニメはディズニーを筆頭に、大人から子どもまでオールターゲットを狙え、当たった際のヒットの度合いが大きい。ディズニー、ピクサー、イルミネーションにDWAが加われば、4本柱としてさらに大きな市場になる可能性がある。

今後も4スタジオそれぞれに注目作

今後についても、4スタジオそれぞれに注目作がある。DWAの試金石になりそうなのが、本国で2019年公開予定の『ヒックとドラゴン3』(仮題)だ。青年ヒックとドラゴンの絆と冒険を描き、感動作として評価が高いものの、1作目の興行成績が振るわず、2作目は日本では劇場未公開だった。

実は、DWA作品は感動のストーリー性重視で、キャラクターの性格がはっきりした『ボス・ベイビー』は例外的だった。本来の感動路線に戻る『ヒックとドラゴン3』を、今度は日本でヒットさせることができるのか。それに先立つ今年12月には、イルミネーションが児童文学作品をアニメ化した『グリンチ』の公開も控えている。様々な性格のアニメ作品を、東宝東和がどう両立させるか、腕の見せどころだろう。

『グリンチ』 クリスマスを愛する街で、ただ1人クリスマス嫌いなグリンチが騒動を巻き起こす(12月全国公開/東宝東和)(C)UNIVERSAL PICTURES

(「日経エンタテインメント!6月号」の記事を再構成 ライター/相良智弘)

[日本経済新聞夕刊2018年6月30日付]

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