ユニクロ初のリゾートウエア 非日常ムードを満喫
宮田理江のファッション戦略論
初夏の気分を盛り上げていきたいこの季節。街中でも着こなせるユニクロのリゾートウエアで、非日常ムードやモード感を取り入れてみませんか。ファッション・ジャーナリストの宮田理江さんが解説します。
「ユニクロ」から初めての本格的なリゾートウエアコレクションが話題となっている。世界的なトップデザイナーと組んだ提案は初夏の気分になじみ、非日常ムードやモード感を招き入れてくれそうだ。洗練とカジュアル感が同居するコレクションの魅力を見ていこう。
「tomas maier and uniqlo」が示すリゾートウエアとは?
まず「リゾートウエア」のイメージをつかんでおきたい。「リゾート」という響きからすると、海辺・南国向きといった印象を抱きやすいが、必ずしもそうとばかりは限らない。「リゾートで過ごす時間にふさわしい」といったニュアンスは帯びているものの、街中でも着こなせる服が多い。「シーズンを超えて重宝する、気負わない雰囲気の服」「リゾート気分を味わいながらも街中でアレンジできる服」といったとらえ方ができる。
イタリアの高級ブランド「BOTTEGA VENETA(ボッテガ・ヴェネタ)」を手掛けるトーマス・マイヤー氏とコラボレートしたコレクション「tomas maier and uniqlo(トーマス マイヤー アンド ユニクロ)」は伸びやかでリラクシングなムードを醸し出している。米国屈指のリゾート地、フロリダの太陽にインスピレーションを得たという今回のデザインは、上質感と着やすさがとけ合い、ビーチと街中を着替えなしで行き来できそうな「シーンフリー」の着こなしを提案している。
優美なフェミニンフォームの涼しげワンピース
コットン生地のワンピースは袖がふんわりと膨らんだバルーンスリーブで、くつろいだたたずまいに映る。袖を少しまくり上げれば、さらに立体感を引き出せる。胸元に自然な見え具合のギャザーが入ったおかげで、柔らかい表情が備わった。1枚で着てもよいが、スカートやパンツを添えてチュニック風にもまとえる。
パームツリー(ヤシの木)柄を細かいモチーフで全体にあしらったワンピースは、肌当たりの優しいシフォン生地で、夏場も涼やかに過ごせる。ディテールの凝ったベルトや胸ポケットがアクセントになっている。ほんのりとドレープを利かせてあるのも、力みを感じさせない「エフォートレス」の気分。ワンピースとして着るだけでなく、前ボタンを全部開けて、ローブのように羽織ることもできるから、着こなしの幅が広がる。
若々しく軽快に着たいシャツ、ポロ、ショートパンツ
リゾートウエアの持ち味は「色」にも表れる。今回のコレクションには7分袖ブラウスのパープルをはじめ、オレンジのロングカーディガン、グリーンのショートパンツなど、みずみずしいカラーリングがいくつものアイテムで使われている。
見慣れた白ブラウスとは別の大人っぽさを寄り添わせた、バルーンスリーブのブラウス。胸の高さでの切り替えと、胸・袖先にギャザーが施されていて、大人の愛らしさも宿している。ポジティブカラーが多くなるリゾートコレクションでは「色で遊ぶ」という楽しみ方を織り込んでいきたい。
オフでも自分好みに着回しやすい
メンズやゴルフ・テニスのイメージが強かったポロシャツだが、今回用意されたポロセーターは肩に縫い目がないので、フェミニンでソフトなシルエットを描く。胸元の見慣れたボタンがなく、サマーセーター感覚だ。仕立て方やディテールが違うだけでも、服の印象がさま変わりする。
ポロのスポーティー感とニットセーターの穏やかさを兼ね備えているから、ボトムスとの相性を選ばない。ショートパンツに合わせれば軽快に、ロングスカートに合わせればフェミニンにと、自在のミックステイストに整えられる。
ショートパンツは夏の必需品となってきたが、カジュアル過ぎて子どもっぽく見えることも。今コレクションのチノワイドショートパンツはタックが入っているので、裾に向かっての広がりがエレガントに映る。風通しと肌離れに優れるワイド幅もうれしい。ストレッチ素材のおかげで、アクティブなお出掛けにも心強い。パワーをもらえそうなヴィヴィッドカラーは休日気分を弾ませてくれそうだ。
街でも着たい、心ときめくリゾート気分アイテム
「リゾート、夏=薄着」と連想しがちだが、急な冷え込みやエアコンの冷風などで温度調節したくなる場面は珍しくない。長袖パーカはサッと羽織れる上、暑くなれば肩掛けや腰巻きにスイッチしやすい。
このような「ユーティリティー(使い勝手のよい)アイテム」は手放せない。着心地が軽く、汗抜けのよいエアリズム機能を備えたパイル地パーカは、シーズンを越えて頼りがいがある。盛り上がっているストリートやユース(若者)カルチャーを、1枚で写し込めるのも魅力の一つだ。
肌に優しい質感のパイル地はショートパンツのように、素肌と直接触れるアイテムで取り入れたい。夏に見かける機会の増えるアイテムだからこそ、「ありきたり」に見えにくい「一芸」を備えたショートパンツが欲しくなる。
グリーンの地色は夏場にふさわしい涼やかなトーン。赤いウエストゴムがアイキャッチー(2色が逆パターンの商品もあり)。ルームウエアと街着を兼ねたショートパンツはコストパフォーマンスの面でも納得感が高くなる。
スイムウエア(水着)が用意されているのも、リゾートウエアのコレクションならでは。パームツリー(ヤシの木)柄をプリントしたトライアングルブラは自然と水辺やプールサイドに溶け込む。音楽フェスティバルや旅先ではTシャツやワンピースの中に合わせれば、若々しいサマーレイヤードを組み立てられる。今回はブラとショーツが別売りだから、違う色のショーツと合わせればカラーブロックのコーディネートも楽しめる。
夏のストールは、紫外線やエアコンの風をさえぎる効果以外にも、肌の露出や見え加減を調節するのに役立つ。コーデの味付け役としても実力派のプレーヤーだ。かぶったり巻いたりとアレンジが楽しめるポンチョ風のデザインはコーデの幅を広げてくれる。水着の上にまとったり、ワンピースやショートパンツに合わせたりといった使い方ができて、夏のお出掛けに役立つ。
リゾートウエアを日々の着こなしに組み込んで
非日常の感覚を写し込んだリゾートウエアを、デイリーの着回しにうまく組み込めば、手持ちアイテムに別のムードを引き寄せられる。リゾートならではの開放的でリラクシングな風情は夏に向けてのホリデー気分を盛り上げてくれる。機能性や価格などの面で、ユニクロとのコラボは買う側へのメリットが大きい。トップデザイナーが呼びかける「時間からの解放」は、一足早い「心の夏休み」に誘うかのようだ。
(画像協力 ユニクロ)
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートからトレンド情報、スタイリング指南などを発信。バイヤー、プレスなど業界経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした解説が好評。自らのテレビ通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(ともに、学研パブリッシング)がある。
[nikkei WOMAN Online 2018年5月12日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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