MEN’S EX時計取材班が、今年のトレンドを振り返りつつ、取材班の心を射抜いた魅力的な新作時計を紹介する。
時計王・松山 猛さん/作家、作詞家、編集者。本誌創刊以前の1980年代からスイスのモノ作りに注目し、機械式時計の取材、評論を続ける。新作時計展の取材歴では世界中のどのジャーナリストも及ばないはず。
時計ジャーナリスト・高木教雄さん/理工学部機械工学科卒のバリバリの理系。難解なメカニズムをわかりやすく語らせたら右に出る者がない。スイス新作時計展取材歴は20年。世界文化社刊行『時計ビギン』のメインライター。
ライター・吉田 巌さん/普段は服、靴、カバンなどファッション系の仕事が多いが、じつは時計の原稿もこなし、バーゼル初取材から今年で15年。ただ最近ジュネーブに行けていないため、来年こそ参加したい。
MEN'S EX 編集長・金森 陽/海外取材の経験は豊富だが、ジュネーブ&バーゼルの新作時計展取材は今年が初。連日超弩級のタイムピースに触れて時計についての知識は急速に増えたが、その分金銭感覚にも若干ずれが。
クラシック回帰の一方機械はますます熟成進化
今年SIHH&バーゼルで発表された新作時計の傾向として、まず挙げるべきは、小径化だ。デカ厚ブームを牽引したブランドも続々40mmを割るサイズを展開。これは手首が細い人が多いアジア市場の要請に加え、控えめなサイズのほうが、よりセンスよく見えるという時計ファン全体のマインドの変化もあるようだ。
また色ではグリーン、ケース素材ではチタンやセラミック、カーボンが目立った。ちなみに前者については時計王・松山 猛さんは「殺伐とした時代だからこそ、グリーンがイメージさせる生命力、平穏、エコロジーといった世界観を多くの人が求め始めているのでは?」という俯瞰的な目線で分析をなさっていた。
機械的には、自社製ムーブ搭載の流れはさらに一段進み、脱進機に非耐磁性のシリコンを用いたものが多く登場。デザインは相変わらずクラシック回帰がトレンドだが、ポテンシャル面は確実に進化しているのだ。
◇ ◇ ◇
■BOVET/ボヴェ
エドアール・ボヴェ・トゥールビヨン
これぞまさに腕に乗せる天文台──松山さん
南北両半球の地球儀でワールドタイムをW表示。浮遊するようなトゥールビヨンも印象的なデザインに。10日間パワーリザーブ。手巻き。径46mm。18KWGケース。発売時期未定。予価4350万円。(DKSHジャパン)
■BREGUET/ブレゲ
マリーン 5517
ギョーシェがないプレーンなダイヤルが、却って新鮮 ──高木さん
今年はマリーンコレクションがリニューアル。ラグ形状やリューズトップに変更が加えられ、よりエッジの効いた印象に。シリーズ初のチタンケースを採用したこちらはサンバースト仕上げのグレー文字盤との相性も最高だ。自動巻き。径40mm。ラバーとレザーストラップの設定あり。今秋発売予定。予価200万円(ブレゲ ブティック銀座)
■BREITLING/ブライトリング
ナビタイマー 1 オートマチック 38
ノンクロノなのに回転計算尺付きなのがユニーク──高木さん
クロノグラフを外した3針ナビタイマー。小さめな径38mmケースと、回転計算尺を持つ文字盤の組み合わせが、理知的な雰囲気を醸し出す。自動巻き。SSケース。今秋発売予定。50万円(ブライトリング・ジャパン)
■BVLGARI/ブルガリ
オクト フィニッシモ オートマティックサンドブラスト
凝りに凝ったSSの表面仕上げとエレガントさ──松山さん
昨年チタンで出た最薄3針自動巻きがSSに。とはいえYG加工後にロジウム&パラジウムをコートし、仕上げはサンドブラストと、凝りまくりの加工で独特な色味と質感を得た。径40mm。146万円(ブルガリ ジャパン)